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終わりに、そして始まりに
敬具我文字を読む君たちへ
かつて戦争があって、それから十数年の時が過ぎた。
あまりにも多くの犠牲が灰となり、そうして忘却の彼方へと葬り去られた。
私も、その灰の一部であると思いたい、そしてそう思っているからこそ、こうして私はここに書き残しているのだろう。
忘れることは、人間の特権である。しかし同時に、それは人間の背負わされた罪である。
「はじめに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった」
血と硝煙と地球の匂いのする煉獄の中で、導かれるように拾ったあの本の冒頭に、そんなことが書いてあった気がする。
私の言葉は、神となりうるのだろうか。
それとも、この世界を焼き尽くし、かつてエデンの楽園を奪おうとしたあの奈落の王が、その廃れた世界の空に君臨するのだろうか。
それは歴史が、そして私の死後にこの世界に生を受ける人々が決めることだろう。
私がなしうることは、ただ、語ることだけだ。
語り、そうして天に召されし魂の代弁者となりうることだけだ。
父よ、母よ、主よ、そして我が友マクスウェルよ。
貴殿らの願いが、運命に導かれんことを。
そしてあの忌まわしき戦いに終止符を打った出来事が、誤解なく人々に伝わらんことを。
神々の、人々の、巨人の、狼たちの、そして子供たちの、一人の「聖女」を巡りし記録が、ここに書き記されんことを。
そしてマクスウェルよ、私の裏切りを、どうか、許してくれ。
我最後の命が、言葉たちに燃やされる前に、印として刻まれることに敬意と畏怖の念を込めて。
ロバート・ウィリアム
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