二.お年寄りには優しく

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二.お年寄りには優しく

ふぅ~。何とかまいた……。 でも、こんなこともあろうかと第2の物件も、 事前に調べておいてあった私って 何て頭が切れるんだろう。 この「住宅難」のご時世(じせい)に、一歩も二歩も先に、 考えて動く私ってすばらしい……、な~んつって。 誰にも褒められないから 自分で自分を褒めよう。 それくらいはいいでしょ?ねぇ神様? それでは、第2の物件まで、 私のマイホームになる 物件まで、また歩いていこう。 てくてく、てくてく________。 てくてく、てくてく________。 あれっ、やっとたどり着いた第2の家に 入ろうとしている者がいるぞ? 「す、すいませ~ん?」 もぞもぞ。 もぞもぞ。 「す、すいませ~ん??」 もぞもぞ。 もぞもぞ。 「す、すいま…。」 「は~??なんだって?」 げげっ、このお方はシルバー世代ど真ん中を生きる おじいちゃんではないか……! 「あ、あのですね……、この家はですね……実は私が……。」 「は~~~??  な~に、言うとるんじゃい?  わしは耳が遠いから、もっと大きな声でしゃべってくれ!!」 ____さっきから、響き渡る声でしゃべってるっちゅうの……。 「あっのですね!!この家は私がつい先日ですね……。」 「やったぞーー!!  息子に捨てられ、行き場がないわしに、ぴったりの家が とうとう見つかったんじゃ~!!!」 えっ、何言ってるの??……、このじいちゃん。 「いやいや、あのですね……。」 「なんじゃい!お前は!ばあさんにも先立たれて、息子にも捨てられた、わしみたいな、か弱い老人から、最後の希望の家まで取り上げようとするのか?」 えっ……? 「最近の若者は恥をしれ!!!」 ま~た、このじいちゃんもはさみを振り上げてきたよ……。 「わ、分かりました……。」
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