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一.私の夢
マイホーム。
それは私の夢。
ロマン。
男の勲章。
そろそろ、私もこの窮屈な家を引っ越して、
いや飛び出して、広々とした
世界に旅立とうと思う。
さらば、窮屈な家よ。
懐かしき我が家よ。
お前と過ごした日々は忘れない。
おまえに罪はない。
ただ、私の成長が勝っただけだ。
ふっ、勘弁しておくれ。
それでは、私が目をつけていた物件まで
行くことにしよう。
今日は何だか、頭上がやけに青いな……。
てくてく、てくてく____。
「いや~!!これは私の家よ!」
「な~に言ってんだ、こっちとら、江戸っ子でい!
そんな、おなごの涙にコロッといくわけねえだろ!」
おいおい、ちょっと待ってくれよ……。
あそこで争っている男女がいるぞ。
こ、これは、私とて、放っておくわけにはいかない!
さぁ、いくぞ!って……、
えっ……?まさか、
私が見つけた物件の前で喧嘩している……。
ということは……??。
「あの~……。失礼ですが……。」
「あんた、なによ!」
「お前、なんだよ!」
「えっ……とですね…あの、この家は……。」
「何なのあんたの物なの?冗談じゃないわよ!
私が先に見つけた物件なのよ!
「な~に言ってんだ!おれが何度も足しげく通って、
つばつけていたんだぞ!」
いやいや、私の方が2か月前から狙ってたんですけど……とは、
この修羅場の状況では言えない……。
「こんな素晴らしい模様がついた家なんか、
あんたたちみたいなオッペケペーみたいな男どもには合わないわよ!」
オ?オッペケペー……?
「てっ、てっめー!だまって聞いてりゃ~、
女だからって容赦しないぞ!」
あの~……、勝手に私がいないところで、
夢のマイホームの取り合いしないでくれますか……?
って又、又言いたい所だけど、そんな雰囲気ではないよな……。
平和主義者の私にはこの現実は荷が重い……。
あっ!!いけない!とうとう女性の方が、はさみをだしてきた!
これはいかん!
「あの~……。」
「なによ!」
「なんだよ!」
____ま~た、同時に言うなよ……。
「ここは、一つお互い大人になってですね……、
特に男尊女卑は私たちの世界でもタブーになりつつあるじゃないですか……?」
「あんた、何がいいたいのよ?」
「そうだ、そうだ!」
「いや……、私が知っている物件でよい物件がありまして、でも、それは女性よりも体格がよい男性の方が住むような立派な重厚で格調高い
お城のような出で立ちでして……。」
「はぁ~?だまされると思うなよ!」
「いやいや、ここは、一つ、だまされたと思って着いてきてください。」
「そうよ、そうよ、男のあんたにはもっとこの家よりも
お似合いの家があるわよ。フンっ!」
「なんだと~!」
「あのー……、砂浜が一望できますよ……。」
「だから?」
「おいしい食事がたくさんありますよ……。」
「ふーん……。でっ?」
「ここだけの話、今流行りの女性ウケが良い柄のお家ですよ……。」
「のったーー!」
いやはや、何とも現金な方だ……。
トホホホ……。
「さよなら~♪ラリホー~♪」____
あの女の人、はさみを振りながら薄ら笑いしている……。
女性ってこ・わ・い……。
背中にやきついて身震いした。
「ほんとに、良い家なんだろうな??」
「は、はいっ……。では、行きましょう。」
てくてく、てくてく____。
てくてく、てくてく____。
「はい、それでは、丁度この先の波打ち際の岩陰を曲がったところに、
それはそれはあなたにぴったりの家が落ちています。」
「落ちているだと!俺様をまってるんだろ!」
そう言って足早に去るあ・な・た……。
グッバイアディオス……。
二度と会いませんように……。
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