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1:驚異のウィルス「ガラーナ」発生!
この世界では幾度となく魔王が復活し、世界を統べるべく人々の住む町々を侵攻していった。そして人々は、勇者を待ち、魔王を討ち滅ぼし、平和がやがて訪れるという、恒久とも思える時の中で世界の摂理は回っていた。
そんな中、ある日突然不可思議な病気が発症した。後にガラーナウィルスと名付けられるこの病原菌は、感染したものの声を奪い、咳が止まらなくなるという恐ろしい病気だった。咳が止まらないというのは中々に辛く、高齢のものなどは、その辛さで体力を徐々に奪われていった。
最大の都市「トキオウ」においてこの病気が発見されてから、人々は口々に「魔王の呪いだ」と言うようになった。
やがて人々は早い魔王討伐を望み、勇者の到来を待った。しかしそんな魔王から一通の手紙がトキオウの国王の元へ届いたのだった。
「親愛なるトキオウ国王へ
挨拶はこの際省かせてもらおう。今回のこの病原菌について、これは我々の所業ではない。むしろこちらにも甚大なる被害が出ている。
我々においても魔導士系の比較的人間に近い者から感染者が出ており、今後のおぬしたちの刺客に対して、これまで通りの対応ができない事も想定される。
ひいては咳の飛沫が防げる2mの距離を保ち、今後の感染防止をお互いに協力し合い、必要最低限の戦いを行おうではないか。そしていつしか再び全力で戦える、その日が来ることを信じて。
魔王 ヨルーサ」
国王はぎょっとした。病原菌の原因は魔王だと思い込んでいたが、実はそうではなかった。原因が分からないままでは対応のしようがないが、いまはただ感染拡大を防ぐのが先決と判断し、魔王の言うように2mの距離を保っての魔王討伐を実施するようにと国中にお触れを出した。
そして医師や薬草などの調合師、魔物使いなど、様々な職業の有識者が城の大広間に集められ、今後の対策について協議された。
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