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 「運命ってあると思う?」 そうアカリは言った。私はそれを隣で聞かない振りをして座っていた。部屋の中には他に誰もいない。余計な物が置かれていないシンプルな部屋は広々としている。彼女はそんな私の様子など気に求めていない風で言葉を続ける。 「おかしいと思うかもしれないけれど……本当に、見た時に思ったのよ。アナタしかいないって。」 彼女が私の足に触れる。所謂、不慮の事故と言うもので使えなくなってしまった足──。幸い神経が残っていた事から完全に歩行不能にはならずに済んだ。しかしそれまで常日頃から人を助ける為に走り回っていた私は愕然とした。今ではどんなに頑張っても以前の様に走る事は出来ない。ずっと真面目に生きてきたつもりだった。それなのに「運命」の神様は残酷だ。私は働こうと懸命に努力した。けれどもその事が逆効果だったのだろう。働く事が困難になった私の様子を見て、皆私の扱いに困り始めた。そんな折に現れたのがアカリだ。彼女は周囲の反対を押し切り、あっという間に私と共に生活する事を決めた。
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