そこにいるだけで

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 佳枝が要介護状態になって実家にいることは聞いていたし、二年間で何度か会う機会があったので、寝たきりの状態になっていても驚くことはなかった。心が動かされたのは、父親に命じられて介護をするようになってからだ。何でも自分でやろうとするような気力に満ちた人が、家族とはいえ他人の手を借りないと生きていけない状態に陥っている。佳枝のパッドを初めて交換した時、俊之はやるせない思いにとらわれた。 「カズは偉いよ。そんな近くに住んでるわけでもないのに、よく通ってたらしいじゃん」 「遠くはなかったよ。バイクで十分ぐらいだし。あたしよりもとっちゃんだよ。仕事探さないといけないのに、ばーちゃんの介護をやるなんて」 「それは違うよ。家にいたかったら介護をやれって言いつけられてる」
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