そこにいるだけで

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 待ち合わせの場所にした駅前には大きなバスロータリーが広がっている。中途半端な大きさのスーパーしか目を引くものはなく、どことなく寂れた雰囲気の駅ではあるが、バスの発着が多く、タクシー乗り場もあるので人通りはそれなりにある。夕方ともなれば、それは雑踏になる。 「とっちゃん、おーい」  改札を出た俊之は、ざわめきを突き抜ける声に顔を上げた。声の主の周囲にいた人々が振り向いたほどだ。  俊之は返事の代わりに手を上げた。何だか相手を見るのが気恥ずかしく、目を伏せながら近づいていく。 「本当に帰ってきたわけね。いやー、久しぶりに会えて安心したよ」 「そうだな。ていうか、いい年して外で大声出すなよ」 「だってそうでもしないと、あたしに気づかないかもしれないでしょ」 「カズだったら目立つから大丈夫だよ」  話をしているうちに、苦笑が浮かんでくる。垂れ目とショートボブの髪型が、高校生の頃から何も変わっていないせいだろう。二歳下の従姉妹である和美と年末年始以外で会うのは久しぶりだった。
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