そこにいるだけで

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 引っ込み思案で人との関わりを避けるような子供だったのは、十年ほど前の話だ。外で大声を出すことも、親戚の家で自分のためにお茶を淹れることもできないような子供だった。 「昔の、だったらね。あたしは昔のじゃないよ」  和美はどうしてか笑みを消していた。思い出したくない過去に触れたかと済まない気持ちになる。  けれどすぐに和美は笑みを取り戻して、もう一つの湯飲みにお茶を注いだ。 「帰ってきたってことは、面接もやって、今日はもうすることがないんでしょ。とりあえず寛いだら?」  そうだな、と言いながら俊之は腰を下ろした。肩を並べてテレビを見るのも久しぶりで、昔はアニメだったが、今日は刑事ドラマの再放送だった。 「面接、あんまり良くなかったみたいね」  畳に腰を下ろしてすぐに、和美が口を開いた。 「まあな、わかるかな」 「とっちゃんはいつも暗い顔をしてるけど、今日は特別ね。しょうがないから、今日は慰労会でもやろうか。どーせお祈りされるんでしょ」 「まだ終わってねえよ」
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