発熱の日のあとに

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 その日の昼休みが終わろうとする頃、手洗いの前でシステム情報部から出てきた里井とすれ違った。システム情報部の部長である女性と肩を並べて歩いて来た里井と……。    耳たぶが熱くなるのを感じた。里井の固い唇の感触を思い出した。心臓が高鳴る。手洗いに行くのを諦め引き返そうかと考える。    三メートル、二メートルと里井が近づく。    ――ぶ、部長。    もしかすると一緒に歩を進める女性も今朝の菜々葉たちのことに気づいているかも知れないと、思うと心臓が更に高鳴る。心音が彼らに聞こえるのではないかと思うくらいに……。    里井が一メートルまで接近した頃、菜々葉は立ち止まり二人に会釈した。   「お疲れ様です……」    里井の無表情な目が少し大きくなり、通りすがりに菜々葉を追った。    ――きゃあ、里井部長と目が合ったよ。    里井の顔が縦に動いた。まだ、女性との話は続いているように見えた。    自分の耳たぶが赤くなるのを感じた。思わず里井から目を逸らした。
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