事件

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事件

 身体中が痛かった。    久しぶりに運動した時のように体中の筋肉が悲鳴を上げているようだ。筋肉痛の理由は直ぐに分かったが、このような時、日頃の運動不足を痛感した。   「気合入れて早くしろ! おい、誰か、車手配してくれ……それと……」   「はい!」    事務所の中が騒がしい。奈々葉は里井の怒鳴るような声を久しぶりに耳にした。   「宮崎、今直ぐ出る準備!」    ――え、私……?   「えっ……ああ、はいっ……」   「どうしたの……」    と、奈々葉の横のまだ真新しいスーツの男性社員に呟いた。 『……○☓バンクのシステムの個人情報が……』   『漏洩? ……でも、あるじゃない……ほら……セキュリティ……システム……』   『データベースから個人情報が出力かコピーされた形跡があるそうです。警察によると外部からの不正なアクセスではなさそうです。だから……』   『内部の人間……?』    菜々葉は廊下に目をやる。屈強に見える黒いスーツの男たちが足速にシステム情報部へ消えてゆく。その手に折りたたまれたダンボールの箱を抱えて……。   『まだ、可能性ですが……』   「部長……これ……」    美希が里井に車のキーを手渡した。   「すまん……お前らシステム情報部と連携を密に取れよ!」    奈々葉は取るものもとりあえず里井の後を追った。
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