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夫婦生活
午後八時、奈々葉はいつもより早く帰宅した。
ふう……。
玄関のドアを開けるとため息がでた。
「お帰り……」
信也が出迎えてくれる。
――「今日は早く帰ったね」は……? なんて、言ってくれないよね。
「お疲れさま。ああ、奈々葉、晩飯、出来てるから、すぐチンするね?」
――ああ……だよね……。
「ああ、ありがとう。助かる……」
――ふう……。
「ねえ、奈々葉、そろそろ排卵日でしょ?」
レンジで温まった料理を運びながら信也が言った。
子供が出来るまで、奈々葉の排卵日には必ずセックスする、というのが二人の約束だ。結婚して三年目になるが、二人に子供はまだ授かっていない。不妊治療にも通ってみたが、どちらにも特に異常はないと担当医は言っていた。
奈々葉はスマートフォンに目をやって、カレンダーを見た。日付の欄に排卵日を示す赤丸が記されている。
――そうだっけ……。ちょっと、めんどくさいな。
✣
食事のあと、奈々葉は自分で全裸になりベッドに潜り込んだ。
目を閉じて、信也を待つ。
信也がゴソゴソと奈々葉と同じシーツに潜り込む。
ベッドの中で背中から抱きしめられ、胸の膨らみに冷たい手が滑った。三年前より出たメタボ腹が尻の辺りに当たる。まるで冷たい機械か何かにゴリゴリと揉み潰されるような痛さに耐える。
「ああ……ん……信也……さん……」
――ちょ、ちょっと痛い……。
「ああ……奈々葉、いいよ……声、出しても……」
「ああ……もう……恥ずかしい……から……」
奈々葉はイヤイヤと顔を左右に振った。
信也の手のひらが下腹に滑り降りる。
「ああ……恥ずかしい……」
手のひらが奈々葉の茂みの上でクルクルと遊ぶ。
「ああ……、くうん……しんや、信也さんっ……」
――まだ、まだだって……。
両足の間の柔らかい場所に信也の指が滑る。身体が中心に押し込まれる。傷口が左右に開かれるような痛みが走った。
「気持ちいいでしょ、こうすると……?」
奈々葉の身体の中でクネクネと何かが動いているのが分かる。身体の奥をかき混ぜられる。痛い。傷口が更に開かれたようだ。
「んっ、んっ、んんんん……つぅ……」
――まさか。痛いよ。まだ濡れてないってぇ……。
「そろそろかな?」
身体がうつ伏せにされ、腰が高く上げられる。熱いものが腰にあてがわれ、ゆっくりと押し込まれる。「キツイなあ」と呟きながら信也が腰を入れる。身体が左右に裂かれるようだ。
――ぬ、抜いてよ。
菜々葉の身体がゆらゆらと揺れ始めた。トントントントン……抑揚のないリズムは二人が付き合っている頃から変わらなかった。
「いいいっ……」
――痛い……。痛い。はやく、早く終わって……。
ようやく信也と繋がる部分が湿り気を帯び始めた。信也の動きに合わせ、菜々葉の身体の奥でグチュグチュという音が聞こえる。その音を楽しむかのように腰の動きが速度を増した。
「出る、でるっ……うん……」
奈々葉の身体を強く押し込まれ、信也の身体が止まった。彼の熱いものが身体の奥に注がれるのが分かる。
✣
身体の奥から熱いものがコポっと溢れるのが分かる。それが徐々に腿に滑った。力の抜けた夫のペニスが抜けた。抜けたというより菜々葉の身体が信也を押し出したのだ。
信也は寝息を立てて眠っているようだった。
奈々葉は手洗いに立ち、洗浄トイレのビデ機能のボタンを押した。コポッ、コポと身体の奥から次から次へこぼれ落ちる音がした。
奈々葉は便器の中を見る。そこに白い綿のような物が浮き沈みしている。それは紛れもなく、先ほど放出された信也の精だった。
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