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ダンジョンの始まり
1999年。恐怖の大王は空じゃなくって地底から現れた。発掘途中の遺跡から出土した錆びた鏡を作業員が磨いている時にそれは起こった。
都会の真ん中に開発工事を始めた途端出土してしまった遺跡だった為に、メディアも注目していた。
当時はフィルムで、交換直後らしく照明やマイクの位置を直す声が入っていた。
作業員が、真剣な表情で作業する姿を撮りながら、いくつか質問をする。よくあるドキュメント風の構図を撮ろうとしていたらしい。ディレクターの指示に、作業員が笑顔で応じ、作業台へ向うと身体を直す最中に、所々はまだサビだらけの青銅鏡が照明を少しだけ反射した。
「うっ!」
マイクを持ち上げていたADが思わず声を上げた。
「すみません、大丈夫ですか?」
驚いた作業員が自身の持つ鏡が原因だとすぐに気付いて謝った。その時、手元の鏡を上下に少しだけ振った。反射した光線が天井や作業員の顔を僅かに照らす。
「おい、勝手に動くな。持ち場に戻れ」
「はい!」
ディレクターの厳しい声に、ADは鏡の反射を警戒するように目を薄く開けた状態で元の位置に立った。
苦笑し、ADの顔に光が当たらないよう反対側に鏡面を向けて机の正面に作業員が身体を向けた。その時、別の遺跡から出土した別の遺物に鏡の光が当たった。明らかに錆びた鏡から照射された光量では足りないはずの照射を受けて光っていた。まるで、そのものが発光しているように。
気づいたカメラマンが自らの意思で、さらに反射を繰り返す光を追いかけた。
「おい、ふざけるな!」
「違います! あれ見てください! 天井!」
カメラは最後に天井を移していた。しかし、天井は無くなっていた。まるで宇宙のように異次元に通じていそうな黒い渦が出現していた。
過去を懐かしむような番組ではここで終わってしまう。しかし、この後彼らは外に逃げ出すのだ。当時ADだったという人物のインタビューが存在し、そこで話していたのだ。
光を発動機とすることを、空からと関連づけるのなら、空から恐怖の大王が現れるというのは、あながち間違っていない。
そして、地球はダンジョンに支配された。
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