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ダンジョンがある日常
ダンジョンが現れた5年後、日本に2つ目のダンジョンが出土した。大地震で裂けた大地の亀裂から入り口が現れたのだ。
震災直後であったため、当時は国により封鎖されていたが、無許可で侵入する者は後を立たなかった。既に第一次ダンジョンブームを経て多くの冒険者が新たな職業として世に定着していた。元々は“冒険家”と呼び、海やジャングルなど未探検の地へ危険を冒して調査を行う人々を言う職業で、その本来の冒険家たち、またはファンからのクレームを受け、区別のためダンジョンを主な探索の場とする者たちを“冒険者”または“探索者”と呼ぶようになった。
当時高校生だった僕は、冒険者になりたいとは思わないまでも、一度は行ってみたいと憧れたものだった。
それから数年でインターネットが急速に普及した。サービス開始直後は10分程度だった無料で見たり投稿できる動画サービスも徐々に発展し、人気の投稿者は広告収入や視聴者の寄付、テレビ出演などで生計を立てられる人たちが出てきた。
彼らの中には冒険者になる方法や、モンスターの倒し方、ダンジョン内の構造や拾えるアイテムを紹介する者も現れた。
そう、ダンジョンにはモンスターが現れるのだ。
それこそゲームのようなモンスター。たとえばゴブリンやスライムなんてファンタジーの定番から、どう見てもただの鶏や熊のようなものまで様々だ。まあ、曲がり角で熊と突然ばったり出会うなんてシュチュエーション、人生でなかなか出会うものでは無いだろうが。とにかく様々だ。
時々、次回予告でダンジョン潜入! と言っておいて一年経っても音沙汰がない時は、更新がないことの落胆と同時に背中を氷塊が滑り落ちるような不安と恐怖に襲われる。あの投稿者は、どうなってしまったのだろう? と。
結果、現代の堅実な子どもたちは冒険者なんかより動画投稿者をなりたい職業に選んでいる。
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