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はじまりの夜(ぼくの見た夢)
「おい。俺たちはこのままでいいのか!」
「どういうことだよ、アニキ」
物言わぬはずのトマトたちが喋っていた。
「人間たちのことさ。あいつら血液検査で血を採られることは怖がるのに、平気で俺たちを絞って俺たちの血液を飲んでるんだぜ? 特にオムライスなんてあんなの正気の沙汰じゃねえよ! 人食い鬼を怖がるくせに、俺たちのことは平気で食べやがる。塩かけるとかやめてほしいぜ。見てるだけで全身ヒリヒリする……」
そう言って、表面に大きな切り傷のあるトマトがその体を揺らす。
「たしかに人間はおっかねえよなあ」
「だからこのままでいいのかって言ってるんだ! 俺たちトマトは人間にいいようにされてるままでいいのか? 人間たちに復讐しようじゃないか」
「……アニキ!」
「確かに坊の言う通りじゃ! にっくき人間たちに反旗を翻すのじゃ!」
「長老もやる気になったようだぞ! それならオレも! 嫁さんをトマト鍋にされた恨み、晴らしてやる!」
「あたしもかわいい坊やを連れ去られたこと、忘れていないわ!」
「……お前さんとこの坊は確かカラスに食われたんじゃなかったかのう?」
「長老、そこは黙っとこうや……」
「よし! 人間たちに復讐するぞー! それっ!「「えいっ! えいっ! おぉー!!!」」」
大きな傷のあるトマトの掛け声に合わせて、青いトマトや、熟れて痛み始めているトマトなんかが、まるで天に腕を伸ばすかのようにヘタを立たせていた。
台風の日の傘みたいだ……と思っているうちに夢から覚めた。
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