同志へ

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同志へ

 夏が終わればトマトたちの脅威はなくなるものだと思っていた。  夏に仲間を増やすあいつらは、夏が過ぎてから何かをやらかしても、援軍が来ることはない。だから変なことはしないだろう、とぼくは考えていたのだ。ああ、ぼくが馬鹿だった。  輸入品のトマトというものがあることを忘れていたんだ。  動物や植物の話で、外来種に固有種が負け、絶滅の危機に瀕しているというのをよく聞く。外来種の繁殖能力はすごいらしいのだ。  つまり、海外のトマトは、ぼくがこれまで戦ってきたやつより格段に強いということだ。海外には、銃の所持が強化されているところがあると聞く。そんなところで育ったトマトが弱いはずがない。気を引き締めていかねば。収穫から時間が経ち、老いぼれになっていることを祈るばかりである。  そう、ぼくのトマトとの戦いは終わっていない。  ここまで読んでわかってくれただろう。  あなたの感じた恐怖は正しかったのだ。  そんなの嘘っぱちだ、ってあなたのことをわらう人がいるかもしれない。  でも騙されちゃいけない。  あいつらは今もぼくたちの油断する隙を狙っている。気をつけろ。  そして、もうひとつ。  あいつらは「たかがトマト」じゃない。  あなたが日本人かどうかわからないのであれだが、「いただきます」と「ごちそうさま」は忘れちゃだめだ。うーんと……、あなたの国の言葉ではなんて言うのだろうか。ようは、食べ物に感謝しようね、って話だ。あなたの身体をつくり、命を繋いでくれるものたちだからね。ぼくたちはわざわざトマトに復讐されるような人になる必要はないんだ。争いの種は蒔かないに越したことはない。  では、長くなったね。健闘を祈る。      ぼくの同志へ          ぼくより
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