ちょっと 強くなってみます!

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ちょっと 強くなってみます!

憲法第22条で、「 何人も、公共の福祉に 反しない限り、居住、移転及び職業選択の 自由を有する。」なんてあるけれど、 これって、 面接のときに言い返せないデスヨネ…、 建築の勉強をして、その頑張りが認められて、 学生時代に、「奨励賞」なんて、頂戴しても、 その表彰式後の写真撮影で、ポーズを決めら れたり、笑顔を強制されたり、学生の代表と して前に出る事を求められたり、そんな事が あると、ウレシクナイ。 それ以外にも、建築事務所でバイトしたり、 デザイン事務所でバイトしたりして、人より も、ちゃんと勉強したつもりでも、勘違いし ちゃいけないのデスネ、 それで、せっかく建設会社に就職できても、 そこに就職できた事に周囲からも驚かれ、 「如何やって、入ったんだ」なんて、 イワレテシマイ…、 「うちは顔でとるから…」なんて入社後に、 採用担当以外の人に云われたりする。そのと おり、新人研修が終わったら、受付に配属に なっちゃうし、コレッテ…、 「人事には逆らうな」とか、「座っているだ けで、外に出なくて良いんだから」とか、そ んなこと云われても…、絶句したまんまの私。 「そうか…」でも、新卒の、キャリアの無い 私には、これに、何て言い返せば良いのか分 からない。何のために勉強したんダロウ…、 それで、3か月の我慢の末、新しいところを 探してみる。でも、面接では、また、自分で は、どうしようもないことをタズネラレル。 「この仕事には似合わないよね」、「これは、 華やかな仕事じゃないからね」「ご家族は何 て言ってるの」「作業着、着られるの」 「現場に、キレイなトイレ無いよ」… って、分かっていますけれど… 「だから、ナニ!」って、カンジデス。 云っている方は、悪気はないですよね、お仕 事ですよね、でも、何度も、何度も、似たよ うなことを云われ続けると、こんな事に、チ ャンと答える気にもなれずに、ただ、失笑し てシマウ。 そう、子供の頃からそうだったんです。学生 時代もそうだった。勉強を頑張って、テスト で良い点数をとって、課題もチャンと全部こ なして…、 その結果、成績が良かったりするのに、 「カワイイといいよね、先生に贔屓されて」 って云われて、努力は台無しにされるんです。 「何でも思い通りでしょ」って、云われたら、 何と答えればイイノデショウ… 結局、私には、外見だけで判断された事ダケ。 gaikenndakedehanndannsaretyauhito...、 努力は報われない、 人生思い通りじゃない......、 そんな色眼鏡で見られるのならば、「フリー ランスで勝負します」、なんて、弱いくせに 強がって、簡単に会社を辞めてしまう。こん なカンジを繰り返し、負けず嫌いナノニ… この世の中、自分が可愛いと思っている女子 は、二人に一人ってご存知ですか? これはどうやってデータを集めたのでし ょう…、そんなに、自分に自信が持てるなん て、羨ましいです。シンジラレマセン…。 フリーランスは、自分優位に、働く場所や、 仕事を選べるメリットがあって、好きな場所 で、好きな時間、好きな仕事ができるのがお 気楽でウレシクテ、 だから、デメリットの労働基準法の適用外、 会社に雇用される労働者ではないから、労働 者を守る労働法の一つの「労働基準法」の適 用外で、突然契約が無くなることがアッテモ、 コマラナイノデス。 私は、 なぜか、 仕事がナクナラナイノデス。 でも、時には、少し、厄介な事に巻き込まれ チャッテ…。 今回の仕事、 初日から、「自分の女」扱い? この所長、 セクハラ、パワハラが大好きで、凄い人デス。 でも…、たった4日間だし、逆に、この所長、 「カラカッテ アゲマショウ…」 200人位が動いている、建設現場に入って の、「竣工検査立会いの仕事」では、短期の、 お仕事で、お小遣い程度の金額しか入ってこ ないけれど、そんな、仕事デモ、 この仕事自体は好きだから、ゼンゼン良くて、 これも、契約金で仕事を選ぶよりも、自宅か ら近くて、なるべく、遅い時間にスタートす る仕事をエランデイルノデス。 この建設現場って、ホントは、朝礼もめちゃ めちゃ早くて、安全確認も大変だし、仕事以 外にもめんどくさいことがイッパイデス。 でも、それも…大勢だから、一人ぐらい遅く に入っても「お疲れ様です!」って元気よく、 当たり前の様に合流すれば、どうにかナッチ ャウンデス。 現場仕事は、気象状況、季節によっても作業 の大変さは全然変わってくるけれど、これも、 暑い時、寒い時、台風シーズンに、働かなけ ればイインダカラ…。 だって、完成したばかりの建物の現場には、 空調が無いんです。その建物の中に居ても、 外と一緒で、 暑い日には暑いし、寒い日なら寒いんデス。 だから、 ここで、ゼネコンの社員の人たちは 大変です。朝、6時くらいの出勤とか、 台風の時なんか、 現場に張り付いて、安全確認トカ… こうした現場で、ちゃんと働いている、 責任者は、大変だと思います、本当に、 心から、尊敬いたしマス。 ……でも、私だって、これだけヤラレルト、 それなりに、ヤリカエサナイト…、 この現場では、 「気が済まない」、だから「外す」を武器に、 やりたい放題の所長は、ただの、セクハラ、 パワハラだけじゃ面白くないのか、結構、 いろいろ、仕掛けてくるんです。ソレナラバ、 私も……、 オ・ア・イ・テ・イタシマス…。 建物が完成した頃に行われる、「竣工検査」 のお仕事。もう、完成間近で、少し埃っぽい けれど、そんなに、汚れないから、この時期 の現場はスキデスシ、 「立会い」は、ただチェックするだけの仕事 だから、肉体労働でもないのですし、良いカ ンジの仕事だと思って、依頼があれば引受け てイタノデス。 ここでも、そんなカンジで、初めての仕事で はなかったのですけれど…、このゼネコンの、 この仕事の女性技術者は、まだ、少ないみた いで、いつも、女性は、私一人だったのデス。 その為に、現場ごとに、そこの所長の判断が あって、一人で行動させないとか、もう一人、 女性の技術者を同じ時間に入れるとか、それ ぞれに対応されていたのですケレド、 ここの所長は、その「女の扱い」をここまで やるのかって、この人、いつの時代の人なの かと、逆に、呆れてしまうほど、面白かった です…、 私が担当したのは、たった4日間 だったけれど、現場は大騒ぎ、デシタ…。 「一日目」 現場の、集合場所の仮設事務所のプレハブに は、その日に必要な道具も揃っているのです けれど、この現場で驚いたのは、壁に、社員 さんと、所長の、携帯番号がデカデカト張り 出されてあったのです。 「 ...... 」 それも……、 たぶん、急いで作ったミタイデス。 これは、自分の携帯にこの番号を入れさせる ためで、この貼紙は異様に「大きい」から、 「気づかなかった」では済まされないのデス、 この所長の本音は、自分から、callしたとき には、事前に自分の番号を知らせておいたの だから、おまえは「必ず出なければならない」 との、圧しつけナノデス。 これが張り出されたおかげで、「所長の電話だ と分かりませんでした」が、私には云えなく なるのです。その、所長の電話は、当然、仕 事のハナシデハナク、 「一緒に帰ろうよ~」などと、「私情の話」の 為の電話です。それが、分かっているから、 所長の番号の電話には出たくないデスヨネ、 だから、「マナーモードで気づきませんでした」 と、してみたら、「マナーモード禁止」のお達 しが、私だけではなく、「 ...... 」 ここの全員、200人程の人たちにデタノデス。 朝礼の後の、打ち合わせでは、いつの間にか、 所長が、背中にくっ付いていて、初めてじゃ ないけれど、「初めてのお仕事でしょ?」 みたいに、「 ...... 」 一から、ここでの仕事の流れをご説明 シテクダサイマシタ。 「知っていますケド」って思ったのですけれ ど、言い返すのも面倒くさいので、黙って、 頷きながら、聴いてあげました。アツクルシ イケレド。 それに、「女性だから」の特別対応も、 私は弱くないから、ゼンゼンいらないの ですが、なぜか、厳戒態勢を、 勝手にしいてくれまして、「 ...... 」 職人さんとのやり取りは、「20分以内」と、 決められましたケレド、 これも、実際に作業をすれば、無理なコトデ、 20分で終わる作業ばかりじゃないのデス。 そう、そう、ゼネコンの社員さんが作業によ って変わる職人さんの手配を間違えて、金物 調整の職人さんが欲しいのに、クロス職人さ んが来ちゃった事がアリマシタ、 この職人さんでは、建具のストッパーの調整 はできない人だったので、当然、代えてもら って…、だけど…、その待ち時間のtime lag、 は認めラレズ…、 その「20分ルール」のせいで、次の日には、 規則違反の、その、職人さんは、現場から 外されていたのデス。「 ...... 」 私と、社員さんはお咎めナシデス。 こんなおかしな事も、ここで は圧し付けられるのデス。 そうされるのならば、いちいち、20分ごとに、 一旦、通路の防犯カメラのあるところまで往 くようにするのですけれど、その為に作業場 から20分ごとに離れなければならないデス ヨネ、 これでは、仕事がしづらいし、時間の無駄だ し、作業効率も悪いですよね、でも、これも おかしいけれど、この所長は、チャント、防 犯カメラでチェックするのデス。 だから、この防犯カメラのチェックも、どれ ほどチェックしているのかと思って、休憩中、 控室にある防犯カメラにムカッテ、 ちょっと、撓り、セクシーポーズをとって揶 揄ってみましたら、その、数十秒後、控室の ドアをノックもせずに、この所長は、控室に 飛び込んできたのデス。「 ...... 」 だから、ワザと、 「キョトン顔」で、無言のまま、所長の方を ムイテミマシタ…、 そ・れ・な・ら・ば・と、休憩時間にこの控 室に居る時には、その防犯カメラの可動範囲 以外の処で休憩することにシテミマシタラ、 なんと…、次の日の朝には、脚立が控室に置 いてあって、たぶん、カメラの可動範囲を変 えられたみたいです。「 ...... 」 椅子の位置までも...、 カメラの前方にキチンと並び変えられていて、 ……そこに座る様にとの「圧」を感じました。 ゴクロウサマデス。 この所長、当たり前の様に、初日から、 「自分の女」みたいに、勝手に管理を始め、 色々、画策したりして、マイルールを 決めてくるのには驚いたのですケレド、 「ふ~ん」、でも、それならば、その様に、 タイオウスルマデ、デス。 「二日目」 この日の仕事が終わる20分前の、「16:40」、 所長からのcallがあったのです。マナーモー ド禁止はそのままだったのですけれど、うっ かり、マナーモード解除を忘れた事にしたら、 イインジャナイデショウカ…、 そのまま、気づかない振りをして、でも、直 接声を掛けられたくはないのですから、急い で帰り支度をしていたんですケレド…、 なにやら周りで、ゼネコンの社員さん達がバ タバタしだしたので「ナニ? 何事?」って 不思議だったので、確認をしに、そのバタバ タの社員さんの前に出て行ったのデスガ…、 すかさず、たぶん、所長に電話をされたので す。つまり、このドタバタは、所長から、社 員さんたちに出された、その人たちにとって も余計な仕事の、「私の捜索」だったヨウデ、 これは、ヤバいので、ダッシュして、建物か ら離れようと一生懸命に走ったのですけれど、 その逃走ルートも、都度、報告の連絡が所長 に入っていたラシクテ、 約20分後、建物の外に出る、通路の端のス グ手前には、良いタイミングで、所長が仁王 立ちをしていたのです。「 ...... 」 私はフリーズして、 「絶句」シタノデスケレド、 「何も、分かりませんけれど」っとのカンジ を出して、とりあえずゴアイサツヲ、 「失礼いたします」と申し上げたら、 「 ...... 」睨みつけられただけでシタ。 なぜ、そこに、所長は居たのでしょう… ただ クビヲカシゲテミマス。 この所長は、プライドが高く、 直接は、私に話しかけてきまセン。 職人さんや、協力会社の人たちも、 この所長には、直接、 話はできまセン。 皆、この所長に挨拶をしても、 この所長は、応えまセン。 いつも現場では、 なにも声を発しないで、 ただ、「 ...... 」 怖い顔をしたまま、 動かず、胸を張り、 仁王立ちをしているので、 『 銅像 』か、 と、思ってしまいマス。 ドレダケコワイカ、ハ...... ガタイの良い、 オジサンが、 仁王立ちして、 黙ったまま、 目だけを動かして、 ニラミヲキカセル、       カンジ......デス、 ソレニ...... 私が所長からのcallに対応しないと、 社員さんを使ってまでも、 分からせようとしマス。 「三日目」 朝から、社員さんたちが、私を捜していたの です。「 ...... 」 派手に、バタバタと「捜しています」アピー ルをしています。昨日の続きみたいです。 嫌味な、所長の仕返しデショウカ?  「やっと見つけた」感を出して、近寄ってき た社員さんの一人が「スマホは、マナーモード にしないでください」と、ワザワザ伝えたの です。「同じ事はさせない」なのでしょうか? この執拗なパワハラは、ナンデスカ?  この頃の現場のゼネコンさん達は、暇なので しょうか? 何故こんな事、全員でシテイルンデショウカ、 「 ...... 」 所長は、真顔で、こんなこと、社員さん達に 指示を出してイルノデショウカ… 所長は、「ヒマ、ナノ、デスネ…」 それでも、二日目よりも、私の仕事量は増え ていたのです。これでは、「残業」になるの です。昨日よりもチェックする場所が20件も 多くなっていましたし、でも、残れば、人が 減って、私を捜しやすくナルノデスモノネ…。 それに、一人になっちゃうと…、外に出られ る、建設現場の重厚なゲートは、鍵が開けら れていても、私には重たくて、動かせないの ですから、アケラレナイノデス。 つまり、ここを出る時、誰かに開けてもらわ なければ、一人になったら、私は出られない のです。「あ…」、一時間遅れになりました。 コレハマズイ…、 やはり…そこに、所長が、待っていました。 「 ...... 」 これでは、飛んで火に入る…デスカラ…、 そう…、一人でそうなったら、逃げられな いから、コウナッタラ…、 ゲートを開けられない事を、自分から、事務 所で、大声で訴えて、残っている誰かに、付 き添ってもらえばイインデスネ? そうすれば、二人っきりじゃないから、その 人が邪魔で、所長は、私を捕まえられないデ スモノネ。 「ん…」って、その時の所長の険しい顔ハ、 コワカッタノデスケレド。 「四日目」 今日で、私のこの現場は最終日。朝礼後「所 長が『このままじゃァ、気が済まない』って 云ってます」ッテ、 所長の下の人に云われたのですが、 「 ...... 」でも、そもそも、そんな、 所長の「オアイテ」は、私の、 仕事じゃありませんケレド。         ......イカガイタシマショウ なぜ、コレに付き合わなければならないので しょう、勝手に、そう、決められているのも ワカラナイデスシ。 だから、これは、キカナカッタコトニシマス。 ナニモイイカエセナイデスケレド… 所長との「かくれんぼ」も最終日、なんで、 仕事以外にも、私にはやる事が増えるんだか、 いい迷惑だったのですケレド、ここまで、直 接、所長からはお咎めの言葉もナク、 私からは、所長には近づかないので、あと少 しで、このゴタゴタからも解放されるのです。 現場が変われば、この所長とも、終わりデス。 けれど、朝、仮設事務所のプレハブから一歩 外に出ると、「 ...... 」10メートル程離れた ところに、所長は立っていたのデス。 私の仕事は竣工検査のチェック隊、図面通り に出来ていない処の洗い出しの仕事デス。 この程度の作業に、ワザワザ所長から担当の 者に直接指示が出される事はナイノデス、 だ・か・ら、所長が、 直接、仕事の指示を私になど出す事なんて無 いのデ・ス・カ・ラ、 ここにワザワザ立たれていても、私は、この 所長を無視しても、良いのです。 なので、見えない振りをして通り過ぎようと シタノデスガ… 「いってらっしゃいませ」っと、嫌味を言わ れたのです、ふり向くと、所長はニヤニヤし ているのです、これから、今日一日、 イヤナヨカンシカシナイデス… また、今日も、所長との「かくれんぼ」が始 まったのです。作業から作業の移動に通路に 出ると、その曲がり角には「 ...... 」 所長が立っていて、 不気味に微笑みかけられるのデス。 「ドウシテ、コノタイミングガワカルノ?」  これが、20分ルールの、セイ… 作業シートの控えをとるために、コピー室に 入ると、所長が飛び込んできて、「 ...... 」 一緒にコピーの作業をするのです。        ......ナンデ、デ、ショウ? 昼休憩、控室で食事をしていると、所長は 食事をしないのに、目の前に座って、ただ ニコニコしているのです。「 ...... 」 でも、ナニモ、ハナサナイ、デスヨ、 ワタシカラ、ハ! 「なんで、朝からずっと、  所長の笑顔を振りまかれるのかが、         ワカラナイデス...」 こんなに、現場は広々としている 大規模な建設現場なのに、 ここでは、ずっと、「 ...... 」 otagainimugonnnomama、 なので、「窮屈」な感じが マックスになってきて…。 でも、あと半日、何も気になりませんと、 微笑み返しをシテオキマシタ……。 あと、半日、 ゼッタイ、ニゲキル! フリーランスは、自ら営業もしなければなら ないのです、この所長は嫌でも、この会社の 他の仕事までなくなるのは、やはり、困るの デス。 そういう事情も、この 所長は「 ...... 」ご存じなのデス。 「あっ、そうそう!」 そうです! この会社の、今年の人事異動デハ、 ビックリシマシタ、 この所長、「 ...... 」 いきなり部長に昇進サレマシタ 「オメデトウゴザイマス!」 でも、残念デス、これからは、 現場仕事ではなく、 デスクワークにナルノデ…、 現場での 「かくれんぼ」がもう、 デキナイノデスネ…。 でも、そんなに、 偉い人だとはワカリマセンデシタ。 本当に、心から、お慶び申し上げます。 ……上司から、女性だからと、 ジャマにされる事は、ありますか?…… … ここの店長、女嫌いだからって、 ここまで、ヤナ奴だと思わなかった!    せっかく、契約社員になれたのに… 「ねえ、レイきいてよ。いま、メガネって  結構安いの多いでしょ。それに、メガネ  ショップもあちこちにあって、一日外に  出てたら、一店くらい、目にするじゃん。  そんなんで、メガネって目が悪くなくて  も、身近に感じない?マイ、最近、メガ  ネって面白い!」 「マイはさ、視力、右が0.4、左が0.2な  んだけど、実は、メガネかけるの止めた  んだ。見えにくいけどさ。慣れてくると、  車の運転もそのまんまだよ。もともと運  転免許の条件についてないから平気だし。  これって、普通ならメガネかけるでしょ。  でも、メガネショップで仕事してるから、  気づいちゃったんだけど…」 「視力って、みんな自分の視力は○○なん  ていえちゃうくらい当たり前に使ってる  けど、実は、ハッキリしないものなんだ  よね。  だって、その日で違うもの、みえる力。  その日ごとに、目の疲れ方って違うじゃ  ない。だいたいが、目が疲れていたら見  えにくくなるじゃん」 「それに、環境でも変わっちゃうんだよね。  その場が明るくても、暗くても見え方違  うし、外では、太陽が出てる光の強い昼  間と、夜の外出の時にも、見え方って違  うじゃん。だから、どのコンディション  でショップに行って視てもらうのかでも、  大げさだけど、レンズが変わっちゃうの」 マイは、興奮したまま、友人のレイに一方 的に喋り続けています。余程、ここに就職 できたのが、嬉しかったようです。マイは、 まだ、専門の知識は無いけれど、若いから、 これからの期待値で、なんとか、このメガ ネ店に就職できたみたいですね。 「デモネ、店で働いてて、バックヤードで  在庫の整理してると、製品になる前の、  フレームなんて、箱に静かにお行儀よく  並んで入っていて、この子たち、良い子  で待ってるのね、早く店に並べてあげた  い。なんてカワイク思うときもあるんだ、  マイ」 「そうそう、それに、カッコつけて、服の  胸にあるポケットにメガネを引っ掛け  てるとさ、前屈みになったとき、スルッ  てメガネ落としちゃうじゃん。そんで、  レンズのほとんどがプラスチックレン  ズだから、傷がついちゃう。気をつけて  ね。レンズ交換したり、買い直しになっ  ちゃうのも、ショックだしね」 「ちょっと!マイ! いい加減にして!  私、仕事中だから切るよ!」 やっぱり、長話で、怒られました。 「うん!ゴメン、またね!」 マイは、メガネの知識がまだ無いのに、やっ と、就職できたし、仕事が始まると、今まで 知らなかったメガネの事がだんだん詳しくな っていくのが、楽しくて、嬉しそうです。 そんな気持ちが大きすぎて、相手の都合も考 えずに、自分の休憩時間に、レイに電話しち ゃったみたいです。 このメガネ店は、大手のチェーン店で、駅前 には、必ずあるくらい、店舗数も多く、 だから、それだけ、人員も必要なのか、マイ は、一回の面接だけで就職できました。けれ ど、面接したのは、横浜の本店です。 マイが配属になったのは、違う店。マイは、 面接を担当していない店長の下で働くことに なりました。これが、厄介だったんです…。 メガネ店は、アクセサリーも置いてある店が あるくらい、貴重品を扱う店として、エレガ ントで、気品と、正統派の顔を持つ店が多く、 そこで働くスタッフ達も、キチンとしていま す。 この店は、気品と、上品さも店員に求められ るようで、身だしなみも、マニュアルに厳し く基準が定められています。 髪の色は黒限定で、長い髪は一つの束ねる事。 前髪は、眉毛のラインまで、それに、ユニフ ォームではなく、個人で用意するビジネスス ーツは、光沢のない生地で、派手過ぎない物。 これは、毎日勤務するのだから、何着も必要 になるのですね。 マイには、仕事がスタートしたばかりなのに、 痛い出費になります。リクルートスーツ、 一着しか持っていないのに...... それに、意外な物に、お金は掛かるようで…、 ここに配属になってから言われたようですが、 接客に必要な「ボールペン」は、安い物は、 許されないそうです。 接客では、直接、お客様に使っていただく為 に必要になり、その、お客様に安いボールペ ンを使っていただくのが、失礼になるから、 との事の様です。 ですから「ポチッ」って、プラスチックの黒 いノック式のものは、ダメで、店長チェック が入っちゃうらしいのです。でしたら、 必要経費で支給してほしいのに。ボールペン も、高価な物は、結構な価格なので、マイは ビックリしたようでした。 けれども、マイは100円ショップで、上品な 花柄の物を見つけたみたいです。まぁ、なん とかそうと気づかれず、店長チェックはそれ で大丈夫だったみたいです。     それくらいかな、気にするのは…。 あ~ぁ、仕事始めの初日に「マイちゃん、カ ワイイカッコ、シスギナイデネ」って、マイ は店長に云われたんでしたね。 そう、この店では、女性客を大事にしている らしいのです。それがどうしてだかは、後程、 分かるのですが...... でも、気を遣うところもあるけれど、まあ、 それくらい、善しとしないと、マイには、 正社員さんと違って、接客販売の仕事なのに、 ノルマやペナルティもないし、まだ、若いん だから、立ちっぱなしだけれど、良いんじゃ ないでしょうか、こんなに、やる気があるこ とだしね、 そこで扱われるメガネのフレームは、 素材は、金やプラチナ。チタン合金などの金 属系。セルロイド、アセテートなどのプラス チック系。それに、天然素材には、牛角、羊 角や、特別高価な、べっ甲等もあるのですが、 天然素材はちょっと、と思う方には、今は、 加工技術も進んでいますし、人工的なもので も、肌触りや質感も、天然素材の本物ソック リなものが作れるので、カメさん、牛さん、 羊さんとか、可哀想なのでそれで良いのかも しれません。 あッ……また、違う相手に、語りだしています。 マイは、ホント、メガネショップの仕事は好 きみたいです…。 「お店の人に聞いたんだけど、日本人って、  3人に1人はメガネやコンタクトレンズ  って、知ってた?」 「ねえ、よーく、周りみてみて、ほら、  結構みんなメガネしてるでしょ」 「ねー!それに、メガネの人は、一つじゃ  なくて、何個か持ってる人が多いでしょ。  一度買いに来てくれたお客さんが、また  来てくれる可能性高いもの。マイの接客  次第で、ご縁ができるもの。やる気も出  てくるの」 「だから、ファッション感覚で、これは仕  事用とか、これは遊びに行く時とか、  その遊び先でも変えられるように、勧め  たり、これは車を運転する時とかの  シチュエーションでとか…、」 「いろいろなところで活躍する人には、  その日毎に違うもので、なんて…、」 「マイ、そんな勧め方もしてるんだよね」 また、長話をしているみたいです。 この店の、休憩時間は、一時間です。 メガネは、カジュアルなメガネや、ビジネス、 フォーマル、老眼鏡など、使い分けをされる 方もいらっしゃるし、対象は、お子様から、 お年寄りまでの、幅広い年齢層に対しての、 接客が必要で、ここでのお仕事は、商品知識 の他にも、いろいろな事が必要になります。 丁寧すぎる接客とか、一寸気難しいとこもあ るけれど、そんなとこも、マイは、新鮮で、 単純な仕事じゃないから面白いようです……。 マイの熱い気持ちはまだまだ冷めません。 働きだしたばかりで、高揚した気持ちのまま なのかもしれませんが、 これでは…、空回りしなければ良いのですが… 「あぁー、でも、でも、あるあるは、  店が、お客さんが入りやすい様に、  入り口のドアはいつも開けっ放し  だから、開口部はエアカーテンに  なっているけれど、  テナントビルの中じゃなくて、  外に面してる、ショップだと、  スーツ着用で、夏は暑いし、  上に重ね着できないから、  冬は寒いらしいの。  外気温とほぼ一緒で。だから、  気づくと、  エアコンの真下に居るんだよね…」 マイはチャッカリしています。 でも、店内のエアコンの風も強めで、頭上か ら真下に「ボーッ」と、吹き付けてくるのを ダイレクトに受け止めるので、結局、髪が乱 れない様に、どんなに暑い日で頭がムレテモ、 髪は「ガチッ」て、固めているらしいのです。 それでもマイは、そこの立ち位置は、キープ したいので、メガネを手にして、クロスでき れいに磨いてるフリをしながら、そこから動 かないで、いい様に、静かに頑張っています。 そう、そう、そんな店員さん、いますよね…。 「いらっしゃいませ、  何かお探しですか?」 「あの、学生なんですけど、  就活なんで…、  リクルート用ってありますか?」 「モチロンです。  よくご存じですね。  絶対に、お勉強用とは、   かえた方がいいですよ、  学生さん用とも違いますし」 「お仕事では、  お仕事先の、先方にも  失礼のない様に、  ソレナリノものを選ばれて、  身に着けませんと…、」 「就活の時から、  そこまで気になさって  おられますと、  お客様は、間違いなく、  他の方より、差が出ます」 「やっぱりですか、そうですよね」 「はい、どうぞ、こちらへ…」 「よろしかったら、  お手に取られてご覧ください。  こちらに、いくつか、  おススメできるものがございます。  どうぞ、鏡もお使いになって、  ゆっくり、ご覧くださいませ!」 チャンと接客ができているみたいですね…、 マイは、この仕事に向いているのかもしれま せん。 接客センスが良い感じに出ていて、 すかさず、お客様におススメのフレームを 手にしてもらい、鏡の前までご案内もして。 「へぇ~  こんなカンジなんですね」 「はい、こちらのフレームは、  レンズがスクエアカットに  なります」 「なるほどですね」 ところが、突然、マイの背中越しから、 男性の静かな、穏やかな声がして、 この二人は、そこで話が止められます。 「いらっしゃいませ。  お客様、失礼いたします」  「マイちゃん、2番、入って下さい」 30半ばの小太りの店長が足音も立てずに、 いつの間にかマイに近寄っていました。 …… アッ、びっくりした。ホント、  この人苦手だな、すごく神経質で、  プライド高くて、扱いにくい。  何よ、接客の邪魔までして、  マイの成績上げないつもりなの?             まったく…。 この店長は、マイの採用時に面接に立ち会っ てはいなかったですね。だからなのか、ここ の他のスタッフとは、違う対応をする事が、 多いみたいです。それはなぜなのか、後程… ただ、マイは本店で面接をしてもらい、その 時の担当は、この店長よりも、上の者で、エ リアマネージャーだったために、この店長は、 仮にマイに不満があっても、この採用に関し ては、意見できないようで…  「マイ、この店じゃなくて、本店で面接し   てもらって、この店長よりも偉いエリア   マネージャーに選ばれたから、なんか、   最初から、自分で選べなかったのが気に   食わないんだか、店長、なんか、マイに   はキツインダヨネ」 せっかくガンバリを見せていたマイだったの に、店長に割り込まれてムクレテいるみたい です。他のスタッフさんは、みんなマイに優 しいのに、この店長だけは、マイに意地悪ば かりしてくるらしいのです。 「これって、パワハラじゃん。  マイだって店長の事嫌いだけど。  仕事じゃん、頑張ってるのに、  やりにくいんだよね!」 まったく、これが、初めての事ではなさそう で…、 「だいたい、このまえも、  店長なんて、  十分にオヤジのくせに、  老眼鏡を作りに来たお客さんには、 『まだ、自分は若いですから、  知らないこともいっぱいあります』  なんて訳の分からないアピールも  してて邪魔臭いし。  そんなのお客さんに失礼じゃん」 愚痴り出したら止まらないようです。 先ほど店長が云っていた、「2番」は、 店の隠語で、「食事休憩」を意味する らしいですね。 この店長は、マイがいつも最初に休憩に 入るように仕切るようで、 「新人は、最初に休憩に入れ」 との事らしいです。 休憩は、ここの店の者は、一人ずつ、 順番に入っていき、一番目のマイは、 開店から、 2時間ほどで、一時間休憩になるのですが、 店は、19時までなので、ここで休憩に入った ら、その後の時間の方が長く、6時間の立ち っぱなしになります。これが、毎日だと辛い ことになるのでは…。 ですから、他の店では、決められた 一時間休憩を分けて、 40分20分にしたり、30分30分に したり工夫しているのですが、 ここの店長はそれをしないみたいで、 そうです、 少し、 融通が、利かないみたいです。  「はい、店長、ありがとうございます。   マイ、最初で申し訳ないですけど、   2番入ります」  「はい、行ってらっしゃいませ」  「行ってらっしゃいませ」  「行ってらっしゃいませ」  「行ってらっしゃいませ」  「行ってらっしゃいませ」 …… コレダヨ、この店、    みんなでイチイチ    返事するんだよね ……。 「この時間、  お腹が空いてると、  この雰囲気で、マイの  頭に出てくるのは、  マイが良く往く、  元気の良い居酒屋さん  みたいじゃない?アッ、  今日も行こうかなぁ~」 「まあイイけど、店長が、  それで良いんだったらね。  店長の店、ダ・カ・ラ」 この店の、スタッフさんは、マイ以外、皆、 正社員さんで、朝、店に9時に出勤します。 そこから、ずぅーと、立ちっぱなし。 マイは、 10時からこの店に入るのに…、 それなのに最初に休憩に入れられるのです。 可哀相に…。 この店の、店長以外のスタッフさんは、 あの、 ジャニ〇ズ にも負けないイケメンで、長身の、 体型だって、パーフェクトな人たち。 お金もかかってるスーツ姿も、それぞれ、 センス良く、服に負けないで、チャント 着こなし、みんな似合っていて、モデル みたいに 凄く、良いカンジを、出しています。 マイは、その中で、ただ一人の女子。 この店で一番年下の若いマイでも、 ニヤケテしまう程です。 このイケメンを揃えたのは、店長…。 「スゴイヨ!マイ、  行ったことないけど、  ホストクラブも、  このメンバーで  できちゃうんじゃないかな」 …らしいです。 その接客も、やはり、ソフトに上品で、お客 様への接客も、店内のご案内に紳士的なエス コートも加え、商品説明だけではなく、 スマートな会話も楽しめます。それに、新人 のマイにも優しいのです。 で・す・が、この店長のせいで、なかなかス タッフさんたちと、仲良しになれないようで すよ。 「店長って、  そっちなんじゃないのとか、  思っちゃうくらいだよ。  自分で選んだスタッフ、  イケメンのばかりじゃん。  珍しいよねこの店、  女子は、いないんだよね…」。 「マイが、ちょっと、  店長以外のスタッフさんと  喋ってたときだって、  いつも、毎回、  わざわざ間に入って、  用事云い付けるの、  止めてほしいんですけど」 なるほどね…、あぁーあ、休憩も、そろそろ 終わりです、ここで、トイレに行っておかな いと、大変。 女子、独りなのに、後でトイレに行きたくな ったら、他のスタッフさんたちの前で、 「3番入ります」って言わなきゃいけなくな るのですが…、 そうしたらまた、皆さんから、 「行ってらっしゃいませ」の店内コールにな ってしまいます。ぜったい回避した方が身の ため、それに、これでは、そのうち、トイレ を我慢して、病気にならないかも心配です。 店内には、トイレが一つだけで、お客様は、 女性でも、男性でも、ご使用になりますが、 マイは、そのトイレが、女子が独りなので、 恥ずかしくって使えません。なので、 昼休憩に、外に出て、済ませてきます。 「マイ、ただいま戻りました。  ありがとうございました」 「お帰りなさいませ」 「お帰りなさいませ」 「お帰りなさいませ」 「お帰りなさいませ」 「マイちゃん、じゃあ、  駅頭で、ティッシュ、  一箱お願いします」  ……えー、さっそくだよ、まったく……。 本当に、マイには厳しい店長です。  「はい、店長。   マイ、行ってきます」 ここは、東横線と南武線が交じっている、 武蔵小杉駅の前にある店です。 駅周辺には、いくつもタワーマンションが立 ち並び、大型商業施設には他と比べてもおし ゃれな人気店がいっぱい入っています。 今日も駅前は人通りが多いけれど、こんな暑 い日に、マイは、なんで駅頭に行かなければ ならないのでしょう、しかも、ゴゴイチバン でめちゃめちゃ暑いのに、気の毒に…。 「ふん、まあいっか!  実は、ティッシュ渡すの、  マイ、得意なんだよね。  ふふっ、まあミテテヨ」 マイは、ポジティブな娘なのね…、 さてと、駅前に来たら、改札口から少し離れ て、駅の敷地内に入らないようにするのは決 まりごと。そして、駅に向かって立って…、 先ずは、ティシュの箱は足元に置くのね。そ う、これで素早く、手に補充できる様にする のね。 そして…、 「ここで、良くやるんだけど、  大声で、 『○○です、  ティッシュいかがですか?』  なんて、声はデカいんだけど、  ティッシュは自分の体近くに  しっかり抱えてる人いるでしょ」 「それじゃあ、  通行している人に  手を伸ばさせちゃうでしょ。  そんなの、  ちょっと図々しいおばさん、  位しか手を出せないでしょ、  だからね、マイは、ここで、  テクニック出しちゃうの」 ほう、ほう… 「あのね、まず、  掛け声はそんなに大きく  出さないの。だって、  ティッシュに  チラシ入ってるし、  いいじゃんそんなの。  そのほうが、  マイも疲れないしね」 「それに、マイは、ここ!  大事にしてるんだけど、  この店に興味がなくて  スルーされることも  ないでしょ」 「だって、それっ、  どんな人がお客さんに  なるのか、今だけじゃ、  分からないんだから、  マイは、できれば、  自分がメガネ  かけてない人でも、  お家まで持って行って  欲しいんだよね」 「同居の人がお客さんに  なるかもしれないしね。  マイは、そこまで  考えているんだよね!」 なるほど…。 「そんで、営業用スマイルで、  ティッシュを持った手を  おもいっきり伸ばして、  通行している人の、  右手の親指と、  人差し指の間に、  リレー競争の  バトンを渡すように、 『はい、どうぞ』って  ティッシュ挟んじゃうの。  そうすると、しっかり  ティッシュ握っちゃうのね!」 そうですか… 「そんで、『えっ、何ですか?』  なんて、聞かれることも  あるんだけど、  そんな時には、 『メガネショップ○○です。  どうぞ、お使いくださいませ。』  って、30度でお辞儀するの。  これ、100%成功するよ!」 「マイ、自分でいうのもだけど、 『読モ』よりは上のカンジで  カワイイの。だから、  男の人が受け取った時とか、 『どこの店にいるの?』  なんて、よく聞かれるし、  店に戻ると、 『やっぱり、いたー、』  なんて、  会いに来てくれる人もいるの」 ……今日も店に戻ったら、マイの接客、          増えそうな気がする…… 凄い自信です。でも、ウソみたいですけれど、 これで、ほんの20分で1箱配り終わっちゃ いました。だから、駅前の交通整理のガード マンさんにも怒られたことないですし、 『もう、終わったの』なんて、驚かれたこと もあるみたいですし。マイが、自慢したくな るのも分かる気がします。 このお仕事、バイトでも、される方の、参考 になりますでしょうか?くれぐれも、その時 の状況にご注意くださいませ。 マイは、ティッシュ配りオンリーのバイトで も、活躍できそうですよ… 「シフトの空いてる日に、  マイ、チャレンジ  しちゃおうかなぁ」 などと考えているようです。   「あーあ、暑かった。   ダンボールの空き箱たたんで、      さっさと、店帰ろうっと」 マイは、そそくさと、駅頭から撤退しました。 「あれれ? お帰り。  マイちゃん、  今日も速かったけど、  ちゃんと配ってるの?」 ……げ!店長ったら、コレダヨ、             白々しい…。 マイのことは、 信用してないから、 ティッシュ配りのとき、 わざわざ、 チェックしに来るくせに。 さっきだって来てたじゃん。 店長視てるの知ってるし、 ふん、ヤナ奴……。 「はい、ただいま戻りました。  今日は、暑い日ですけど、  人、いっぱいでしたよ。  店長、どうしましょう、  マイ、もう少し、  配ってきた方が良いですか?」 「うん、そうだねぇ!  どうしようかなぁ…」 …… えー、そんなぁ~ ……。 何なのこの人、 パワハラ どころじゃないじゃん。 今日は外、何度か 知ってるのかなぁ……、 余計な一言を謂わなければ良いのに、口は災 いの…などとも云います。せっかく、マイが 効率よく、いろいろ工夫しながら仕事してる のに、これでもかってくらい、次から次から なんか仕掛けてくるんですね、この店長さん は、でも… ……あれー、なんか、いま、 爽やかな風が吹いてきたように 感じたけれど、 ライトなムスク系のコロンの 香りかな… これ、涼しいなぁー…… 「おっ、マイちゃん、お疲れさん。  マイちゃん、カワイイから、  通行の人、  絶対受け取ってくれるでしょう。  うらやましいなぁ」 「でも、今日は、とくに暑いから、  店長、今日は、  マイちゃん、もう、良いですよね」  ……あーっ、深瀬さん、優しいなぁ、 マイ、いつも、なんか、 守ってもらってる気がするゥ……。 この深瀬さんは、大学の時、アメリカ留学経 験もあるそうで、この店には必要な人。 武蔵小杉にあるこの店、ここは、都心までの 交通の便が良いだけじゃなくて、遊歩道もあ る多摩川も近くて、緑の多い大きな公園も有 りますし、生活に必要な、 公共施設も、揃ってる便利なところです。 だから、マンションがいっぱい増えるのも分 かるし、ソコにいっぱい人が移り住んでくる のでしょうし、 このエリアの川崎ってところは、もともと近 くに、富○通、N○C、キャ○ン、東○って大 手のメーカーも集まっていて、そこで働いた り、研修に来る外人さんのエリートさんも結 構いるみたいです。 深瀬さんのように、英語ができる人は、外国 の方が店に来る場合を考えれば、とても、頼 もしく、必要な存在です。その、「接客力」 も深瀬さんの武器になっています。ですから、 この店長にも、意見できるのです。 ……マイ、深瀬さんには、店長なんかより、   よっぽど早く偉くなってほしいな……。 「深瀬さん、  ありがとうございます。  マイ、  何かお手伝いできる事、  有りますか?」 「じゃあ、  明日のチラシに出る商品、  今日のうちに、  入り口近くに並べて  くれるかな?  今日中でいいから、  なんか、  冷たいもの飲んでから、  ゆっくり始めなさい」 「はい、ありがとうございます」 …… やったー。また、休憩じゃん。 深瀬さん大好き。如何しよう、 ほんと、癒される。なんで、 同じ男なのに。『ふん!』  店長とは、この、差だよ……。 マイ、 嬉しいのが顔に出ちゃうよ。 いけない、気を付けなきゃ、 深瀬さん、すごい大人の男なのに、 そんなんじゃあ、マイ、 子供っぽくて恥ずかしいじゃん。 クールダウンして 落ち着かなきゃ。そうだ、 時々、マイの事、心配して、 採用面接してくれた エリアマネージャー 電話くれるけど、 深瀬さんの事いっぱい 売り込んじゃおうっと、 まあ、 店長の悪口は ワザワザ言わないけど…。 深瀬さんに、 良くしてもらってるって 言ったら、 エリアマネージャーだって、 きっと、 気に留めてくれるもんね。…… 「深瀬さん…、   マイ、陰ながら応援する女です」             なんてね……。 かなりの妄想劇が繰り広げられていますが、 苦手な店長が居ても、この深瀬さんのお陰で、 マイは頑張っていけそうですね… ……レイの仕事場は、大丈夫?…… 先ほど、マイの長話に就きあわされていた レイは、スーパーで働いている。ウエストが どこだかわからない、青と白のストライプの 割烹着みたいなユニフォームを着て。 社内規定が有るから、髪は、耳にかからない ように後ろで束ね、爪はネイル禁止、下はコ ットンパンツにスニーカーで週4日、一日お きのシフトで仕事に入る。 「聞いてよ、だって、うちのスーパーは全  国規模の大手スーパーじゃないから、働  く従業員少ないじゃん。  だから、フル稼働で、仕事効率考えてま  すってカンジで、これ!その日に好きな  作業の仕事を選べるんだよ」 「毎回、仕事の全部がレジばかり入るんじ  ゃあ、8時間立ちっぱなしで足がパンパ  ンでイヤだけど、惣菜作ったり、野菜カ  ットしたりしてさ、オールマイティーに  頑張ってるフリするんだよね、レイ」 確かに、その時々で、違う仕事に入って、 調理の手伝いや、ラッピング、 パック詰めとか、 上半身だけ動くレジより、 からだ全体が動かせる作業の方か 意外に疲れないのかもしれない。 「レイ、丸かったり、小さかったりする形  でも、ラップ、上手にできるようになっ  たけど、家でもフツウにラップって使う  じゃん、楽勝だね。今度、レイの技みせ  ちゃうよ」 そう、やった事が、ある人と無い人では、そ れに違いはでるでしょう。そのくらい、ラッ プはその大きさ、幅はアッカン!業務用のモ ノは、初めて見ると感動する。それに、ここ の仕事は、スタッフが少人数なので、多種多 様、バックヤードは、事務の電話対応とか座 り仕事もある。 「そんで、おなかすいたら、惣菜とか、  ちょっと、味見で食べちゃうし、そう、  野菜はともかく、フルーツをカットし  てたら、結構高いフルーツも食べれち  ゃうんだよ。これ買うの、レイには手  が出ないし。だって、高いんだから」 それは如何なものかと… 「ねっ、結構さぁ、  こんなカンジで  自由だからストレスたまんない」 レイのここの給料は、時給の一番高い、レジ で採用になったので、1,100円で計算されて、 土日祝日は、時給プラス100~200円で、 あとは、17時以降もプラス150円。 「それに、  惣菜のパートのおばちゃん  なんて、『あんた、  しっかり食べてるの』なんて、  レイの事、  自分の子供のように心配して、  休憩中になんだかんだ毎回さぁ、  食べるもの持ってきてくれるし」 ここは、スタッフ達も、幅の広い年齢層で構 成されていて、ここでのお付き合いは、世間 が広くなる。レイは、上手に、年上ともつき 合っている。 仕事に出ていると、一日、三食でも、そんな、 カンジで、全部、済んじゃうことも有る。仕 事上がりにも、売り場担当にちょっと声かけ て、お得にゲットできるモノもある。 大手スーパーだったら、従業員出入り口に、 ガードマンチェックがあって、入場・退場管 理の際、カバンの中まで見せなければならな いけれど、何せ、ここは、地域密着のローカ ルなスーパーで、そんなことないみたいだ。 いま、レイは働いて6か月目、有休が付くと、 店長から聞た様で、それが嬉しくて、マイと も、職場の自慢話に花が咲く。 店長もレイには優しいから、 この前も、立ち仕事が長くてシンドソウにし ていたら、「事務、手伝って」って、 バックヤードに呼ばれて、そのまま、事務仕 事しようとしたら、「良いよ、休んでて」って 云われて、ただ椅子に座っていたりして。 時々、モニターチェックで、店内を観たりし ただけでも、休憩じゃないから時給も ちゃんといただくしね。いいじゃない、 この店長とのカンジ。 この店は、レイの家から近くだし、先週、お 母さんが店に買い物に来て、家に訪ねて来る 親戚のお客さん用に、魚売り場で刺身を探し ていたんだけれど…、 「鮮魚の社員のおじさんに、お母さん紹介  したら、おじさん、黙って、尾頭付き、  姿づくりのお刺身、豪勢なやつを、お皿  に盛りつけて、作ってくれたの。あれ、  5千円以上するって、お母さん驚いてた」     みんなで仲良くしてるみたい…… けれど、 その店長次第ではパートでも、天国と地獄ほ ど仕事の待遇が変わるらしい。 この店ではそんなこともなく、仲間意識も 強いようだ。それに…、 レイは、これから、結婚するかもしれない。 大切な人のために料理を作る...、その時に、 役立つ事にもなる、技も身に着く。 ここで働くと、 肉のカット作業では、牛・豚・鳥のそれぞれ の部位についての違いや、その良し悪しも、 分かってくるし、 魚も、「三枚おろし」とか、実はそんなに 難しくなくてできちゃうようになる。 「こんにちは、いらっしゃいませ」 ……さてと、今日は何の仕事に入ろうかな、        今日は、一日中、雨……。 「おっ、レイちゃん、  お疲れさま。雨なのに、  今日も爽やかに、いい笑顔だね」 「店長、お疲れ様です。  今日も元気に頑張ります。  よろしくお願いします」 …… でも、今日はムシムシするなあ、 あーあ、しかも、なんか、ノボセルなぁ、 あれ、ヤダ、レイ鼻血出ちゃった。 ヤダ…、   恥ずかしいじゃん……。  「レイちゃん、大丈夫、何したの?」  「あ、大丈夫です。   のぼせたのかなぁ、   岸田さん、レイ、   ちょっと外れて良いですか?」  「ええ、大丈夫よ。   若い子はすぐ鼻血出るものね、   事務所で少し静かにしてなよ」  「ありがとうございます。   よろしくお願いします」 岸田さんは、レイのお母さんくらい?の人、 レジ担当のパートさん。とても頼りになる、 何でもできる人。 「鼻血止めるのに冷やさなくっちゃ」 「レイちゃん、何、それ、鼻血?   大変だよね、女の子は、  上からも下からも出血なんてね」  「店長、それ!   セクハラですけど。   ちょっと、そこ、ドイテクダサイ。   レイは、クーラーの下がいいから!」  「はい、はい…」 「ああ、そうだね、  じゃあ、少し留守番しててね、  俺は、レジ入ってくるから」  …… やったー、一人じゃん。 しばらく、鼻血だしとコ。 涼しいしね、ここは。 30分くらいは、 このままで大丈夫だよね。 店長鋭いよね、ほんと、 今日は2日目だから、 実は、クラクラするんだよね。 貧血だよ。 これで、今日は上がろうかなぁ…… 「レイちゃん、大丈夫、  あとで野菜手伝ってよ」 …… ああ、笹さんだ。いいタイミングだね。    しかし、良くチェックしてるよね、    何でも知ってるね、あの人は。             コワイコワイ……。 「はーい、鼻血が止まったら行きまーす」 ……  サテト、そろそろ行かないと、 レイ、野菜売り場は、 ホントはあまり 好きじゃないんだよね。 だってさぁ、野菜って 重い物多いし。 キャベツとか芋類とか、 箱に入ってると、 めちゃ重、運びたくない。 まあ、今日は, こんなんだから、 品出しはしなくて良いと 思うんだけどね。 お願いしますよ、笹さん……。 「遅くなりましたぁ、  笹さん、  お疲れ様です。  大丈夫ですか?」 「レイちゃん、大丈夫?  あんまり、アソコ、  休めないと思ってさ。  ここは、涼しいし、  ゆっくりしようよ、店長、  レジ入ったんでしょ?」  「呼んだだけよ、大丈夫。  急ぎじゃないから、  ゆっくりで良いんだけど、  レタス切ってくれる?」 「レタスの外葉、2枚はがして、  芯を100円くらいの大きさの  あたりで切ってね。  急ぎじゃないからね」 「ありがとうございます。  笹さん優しいですぅ。レイ、  ここの方がうれしいです」 「そうよ、岸田さんと一緒じゃあね、  あまり、休ませてもらえないでしょ。   ……あの人、あんなんだからさ」 「ほんとですよね。  レイ、笹さん、ダイスキー」 レイは白々しく、パートのおばさんに抱き着 いて、はしゃげるタイプだ。 「はいはい、  ジャア、お願いね」 笹さんは、この店に10年以上も 勤めているベテランパート。 店長は、笹さんより、後から配属になったし、 実際、この店の仕事を開店から、閉店まで、 一通り何でもできるのは、笹さんだけだから、 店長は意見できない。店長にしてみたら、 目の上のたん瘤だろう、 笹さんはパワフルだし、やりたい放題だもの。 「レイちゃん、何?   鼻血?若いね、  いくつだっけ、いま」 おっ、ポロシャツが似合いそうな、 がっちり肩幅の、短髪男の森田さん。 この人はカッコいいから、レイの好きな人。 けれど、マジメ感が強すぎる。 休日に、フットサルばっかりって…、 でも、メンバーどんな人たちかなって、 レイは、気になっている。 「お疲れ様です。そうですよ、  若いですから!レイはまだね。  森田さん、いくつなんですか?」 「俺?27だけど」 …… へぇー、イイカンジ。 森田さん、主任だもんね。 ちょい上かぁ、 なら、イマノウチ、 からんでおこうかな……。 「そうなんですね~、  あれ? 森田さんて、  フットサル  やってるんですよね!」 「おー、仲間とね、大学時代の」 「へぇー、じゃあ、今度、  友達と行っても良いですか?  友達、カワイイですよ」 「本当? おいでよ、  水曜日の夜だけど、  大丈夫なら。  みんなも喜ぶよ!  女子少ないから」 「はい、ゼッタイ、行きます!」 「わかった。じゃあ、  後で連絡する」   「あと、レタスなんだけど、  2箱分切っといて。  そこに運んできたやつ、  置いといたから」 「はい、ありがとうございます」 …… まあ、いっか、今週、暇だし、 水曜日が休のコトミでも 連れてくか、 他にもいい男、 いるかもしれないし、 さらっと、 観に行っとくかなぁ。    さ・て・と、そろそろ、 店長と代わらないと。 やばいじゃん。もう、 18時30分過ぎだから、 取り敢えず急ぐか。 そろそろ、 レジの中間締めの 時間になっちゃうし。 でも、もう、 レジの混まない 時間にはなったよね ……。  「店長、ありがとうございました」  「おう、大丈夫か?」  「はい、止まりましたから」  「店長、レイ、ちょっと、   店のことで、   考えたこと、有るんですけど」  「何? まさか、レジが嫌だとか?」  「違いますよ、ぜんぜん。   あのぅ、この店って、あんまり、   試食コーナー無いですよね。   でも、結構、店で、   賞味期限切れで廃棄になるもの、   多いじゃないですか」 「だから、賞味期限日になる前に、  近づいた商品を試食に出したら、  良くないですか?」  「それに、各売り場に、  必ず一か所は、  試食コーナーを作るんです。  鮮魚、精肉、惣菜だけじゃなくて。  お菓子、飲料、乳製品、  調味料なんて、細かいとこまで」 「あっ、時間差にしてもいいかな。  11時は、青果コーナー、  12時は、惣菜コーナー、  13時は、鮮魚コーナーとか」 「そしたら、毎日、お客さん、  その、目当ての時間に、  来るようになるかも。  店の混む時間帯も、  変わるかもしれないし」 「廃棄処分も減るし、  販売促進にもなるし。  そこに、レシピとか、  食器もカワイク置いて、  ディスプレイしても善いし...」  「おっ、レイちゃん、如何した。   なんか、   今日はマジメじゃないか。   そうだな、   君の考えをきけて良かったよ。   参考にさせてもらう」   「そうだ、今度、  販売促進会議にも出てみるか?   そろそろ、長く続けるか、       考えてみなさい」  「はい、店長。   ありがとうございます。   考えときます」  「なんだそれ、上からか?   そ・こ・は、   ありがとうございます。   よろしくお願いします。          だろ……」  「いえ、いえ、   考えときます」     レイは、丁寧にお辞儀をした。 …… 店長とは、真面目な話もできるって       分かったけど、ここの店…、 仕事中に、 トイレに行きにくいんだよね… これって、実は、大問題なんだけど、 若い子いないとさぁ、 分かんないのかなぁ……      女性は、ハラスメントとも          闘っているし……、       仕事にやる気があっても…、         職場環境も大事です。
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