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「おぉーっ!!」
雲一つない青空の中で一人の声が高く響く。
「どうしたの?」
私はその声に誘われるように外へ出た。
今日も朝の陽が心地好い。
広い花畑の中で声の主がしゃがみこんでいる。
彼は私を地球から救ってくれたこの星の人だ。
私とは少し違っているが人間とあまり変わらない姿をしている。
「ほら、見て!」
そう言って私を手招いている。
一体何を見つけたのだろう。
花畑の中を進み彼と同じ視界に入る。
「あっ!!」
それを見つけた私も驚きの声をあげた。
「咲いてる!」
そこには包み込むように丸く咲いた何輪かの花があった。
青い花びらには白い模様がそれぞれ違って入っている。
「すごい…キレイ…。」
その美しさに触れながら、どこかで見たような…と、思い始める。
「よかった、無事に咲いて。」
青年は嬉しそうに言った。
「正直、咲くとは思ってなかったよ。あの時地球から持ってきた種。あんなにボロボロだったのに…この星の環境に合ったのかな。…いい匂い…心が落ち着くよ…。」
「…そうだね…。」
そう応えた私の傍で青い蝶が耳元を掠めた。
(あぁ…そうだ…。)
私は思い出した。
地球だ。
この花は、いつか見た写真、宇宙から映した地球にそっくりなのだ。
私が外に出た時は、既に壊れてしまってその青さは見れなかった。
「私の星のある国ではね、大切な人に花を贈る習慣があったの。花にはそれぞれに花言葉が付けられていて、『愛情』『幸福』『純真』『真心』とか色々。その想いを花に託して贈ったの。」
懐かしむように昔話が零れる。
私は誰に、何の花を贈ったのだろう。
「そうなんだ、じゃあこの花の花言葉は?」
「さぁ…初めて見た花だから…。」
「新種ってコト?じゃあ君なら何てつける?花言葉。」
「そうだなぁ…。」
静けさが遠くを感じさせる。
「『別れ』かな。」
多くの自然が、景色が、人間が、一瞬で失われた。
私のいた地球は滅びてしまったから。
「うーん…『別れ』かぁ…。僕ならこっちにするかな。」
彼は私を見て花に触れた。
「 『 再会 』 。」
「だって君は今、地球にあった種から咲いた、この花に会えたんだから。」
彼は私に、笑顔でそう伝えた。
「…そっか…うん、そうだね。」
曇りかけていた空がまた少しずつ晴れてゆく。
「そうしよっか!この花の花言葉。」
『再会』
「他の蕾も咲いてくれるかな?」
「うん、きっと会えるよ!」
穏やかな緑を撫でる風と、優しい光の中で、祈るように水を降らす。
この花が、絶えず咲くことを。
そしていつか、
私がこの星の人と出逢えたように、他の星に救われ、生き延びているであろう地球の人間の誰かに
再び、会えることを願ってーーーーー。
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