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プロローグ
プロローグ
「あっ……」
桜が学校を彩るこの季節。学校にも新しい風が吹くその日、桜が囲む道をバックを右手にヘッドフォンを首にかけた短髪の女の子が走っていた。
「このままじゃ……遅れるっ……!」
ハァハァ、と息を切らしながらも女とは思えない走り方をして、坂を超えて約10分。その女の子は学校に着いた。
「えー、手伝いの生徒はこれで全員ですかね?」
「いいえ、まだ悠里が来てません!」
「またあいつは……遅刻してばっか……」
「おはようございます……!」
神崎悠里。その名がこの女の子の名前だ。
悠里は息を切らしたままドアを開け、担当の小泉先生に挨拶をした。小泉先生は基本温厚なので生徒からは好かれている。
「よし、これで全員か。じゃあ、役目は分かってるよな? 一応確認だ。しほりと達也はパイプ椅子を、悠里と美紀は2階の美術室から木の椅子を、海斗と優馬はそこの机を並べてくれ。頼んだぞー」
「は〜い」
一同は返事をし、悠里は美紀と2人で2階に行った。美紀とは高校からの友達で、よく話す。
「悠里さ〜、よくそんなに遅刻出来るよね、意外と勇気ある方?」
「んー……欲望のままに生きてる。」
クスクスっと美紀は笑い、悠里の手を繋ぎながら階段を登った。
美術室から木の椅子を持って降りる時、新入生が早めに来ていた。
「あれ、早いね……」
「せっかちさんかなー?」
悠里と美紀は一旦体育館に行き、もっかい椅子を持ってきに美術室へ向かう時に、スカートを履いた子に話しかけられた。
「あの、トイレってどこですか?」
(え、こ、声、声微妙……中性的……男みたいだし女みたい)
「そこ真っ直ぐ行って右に行ったら保健室あるから保健室の左に行ったら女子トイレあるよ」
「い、いや……その、だ、男子トイレはどこに……?」
「え、あ、保健室の右です」
「ありがとうございます!」
その子はトイレに向かった。悠里はなんだ? と思いながらも美術室に行った。
2階では美紀がずっと待っており、仁王立ちして怒ってるように見える。
「ちょっと、遅いんだけど〜、何やってたの?」
「なんか、女……男か、いやでも見た目が女……でも男子トイレ……ひ、人助けしてたんだよ」
「全く、早く行こ!」
2人は走って美術室に行き、椅子を持って体育館に行った。それを5往復して、仕事は終わった。すると、美紀が何かを愚痴ってた。
「ったく、男子もっと手伝いなさいよね、ほとんど女子じゃないの。」
「ふふっ、男の子はあんまそういうの好きじゃないんじゃないかな」
「嫌でもやるべきじゃない?」
「まぁ、私たちもやりたくてやってる訳じゃないしね」
入学式の手伝いが終わり、手伝い生徒は次々と帰っていった。悠里は下駄箱で靴を履き替えてる時にあることに気づく。
「あ、カバン忘れた」
「もうー、ドジなんだから」
美紀は笑いながらも、悠里を待ってくれた。
悠里は走って階段を登ると、そこにはさっきの男か女か分からない子が立っていた。
「あ、どうも」
「あの、僕、性別どっちだと思いますか?」
「え? あ、お、男……?」
「そうです。あ、このカバンあなたのですか? 廊下に落ちてあったので」
「え、あ、ありがとう」
悠里はその子からカバンを貰い、階段を降りると、少し大きな声でさっきの男が話しかけてきた。
「僕の名前は、神木燐。 よろしくお願いします」
「あ、よろしく」
悠里は軽く頭を下げ、下駄箱で靴を履き替えた。
「遅いよも〜」
「ごめんごめん」
美紀は少し呆れた顔で悠里に話しかけた。だけどこんなのはもう慣れたのか、すぐ笑顔になり悠里の手を繋いだ。
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