理想と現実

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理想と現実

 わたしは小さいころから人と関わるのが苦手だった。 心の中では、「友達がほしい」「みんなの輪の中に入りたい」 そんな風に思っていても、実際にそれを行動に移すのは難しくて。 小学生になって、一人で行動するわたしに話しかけてくれる子もいた。 すごく嬉しいはずなのに、上手く返しができなくて、みんなからは、 「ひとりが好きな子なんだ」「不思議な子だよね、ほっとこうよ」と勘違いされるようになった。 どうやって友達を作ればいいのか、どうやって話をすればいいのか、わたしには分からなかった。 はじめは友達がいないことを両親も心配していたが、そのうち両親にさえ、一人が好きな子どもなんだと勘違いされるようになっていた。 「変わりたい」そんな気持ちを抱えたまま、中学生になった。 小学生から中学生になるからといって、大きな変化が起こるわけでもない。 「友達がほしい」そんな私の気持ちも。 気持ちと裏腹に、表面に出てしまう’’一人がすき’’そんなオーラも。 なにも変わらない。 変わりたいのに。 なにも変わらない。 中学生になって通学路が長くなった。 みんながワイワイ話しながら楽しそうに通学する中、ひとりとぼとぼと歩く毎日。 「どうすれば変われるのかな。」 「今日こそだれかに話しかけてみようか。」 「話しかけるなら何を話そうか。」 「昨日見たドラマの話ならきっと盛り上がれるよ。」 ひとりで歩く通学路。 わたしの脳内では、毎日、友達と話す自分の空想が繰り広げられる。 空想の中のわたしは、いつだって笑顔でクラスメイトと話している。 それなのにどうして、実際にはそれができないんだろう。 それはわたしが、ただただ 臆病だから。
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