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夕焼け少年
ああ今日も夕焼けは赤い。次々と人の命が奪われていく今日。夕焼けは人の血潮のように赤い。
毎日毎日、町のどこかで兵隊さんになって外国に向かうお兄さんが現れては訃報となって帰ってくる。町は空襲に怯えて人通りなどありはしない。いつかお国が戦争に勝ちどきをあげるまで続くのだろうか。
私は皆が防空壕に向かう中、二つ年上の保志兄さんと山に向かう。どうせ死んでしまうならば防空壕で人の山に埋もれるよりなら自然の山に抱かれて死にたい。そんなことを保志兄さんに言ったものだから保志兄さんは空襲警報が鳴る度に私の手を引いて人の波に逆らい、山へと足を運ぶ。
そこから何度も町の焼ける様を見た。それを横目に私は保志兄さんと逢い引きをする。どうせ死んでしまうのだから、好きな人と時間を共にして何が悪い。
この先、恋などできるかすら分からない。保志兄さんとて、もうすぐ兵隊に取られる。赤紙が来たことは私は知っている。
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