死神と木乃伊

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「社会人らしく、社会貢献出来たじゃないか」 「はぁあああっ?」 「因みに、あの煙はドライアイスだ。心配には及ばん」 「なっ……え?」  茫然とする栄に、篠上は涼しい顔で今回の全容を教えてやろう、と笑った。  主犯を誘き出す為、ターゲットである八重を囮に、自宅に呼び寄せようとしたらしい。  ドライアイスに水を注したのは、夕飯時不在だった万理で、水を注した後、何かが匂うと台所に現れ、火事を演出したのだ。  栄は、言われてみれば煙しか見てない、と今更気付く。  自宅が火事になり、騒がしくなれば、どこかに潜んでいる木乃伊も早く八重を連れ出さなければと、焦りミスを犯す。  案の定、木乃伊は勝手口で夾竹桃の毒のことを叫んだ栄のせいで、慌てて家の中に入らざるを得なくなったのだ。  消防には端から連絡済みで、警察も万理もグルになり、鼠捕りの箱を見張っていたのだ。  栄が捕獲した木乃伊は、革ベルトの代わりに手錠を掛けられ、警察に連行された。  彼の他にも自宅近くで確保された木乃伊が二人、全員が未成年だという事は、後日新聞で大きく報道された。 「ターゲットが八重なら、黒幕がお出ましになるかと思ったんだが」 「黒幕……?」 「この事件の黒幕は、クロエと言う名の作家だ」  クロエとは、ネット上で人気を博している作家で、年齢不詳、存在自体がミステリーと言う、謎の人物らしい。  熱狂的なファンも多いが、その中に正体を知っている者は一人もいない。  そう言った篠上の顔が、少し疲れたように見える。
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