1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、最初から犯人が分かって……?」
「俺も、八重も、クロエの正体を知っているからな」
「え……?」
「城之内、文章って言うのは、口癖や仕草を持っている。他人のソレは分からずとも、家族には分かる」
「……家族?」
栄のその問いには答えずに、篠上はこれで事件は止まるだろう、と言った。
「あいつは負けたゲームを続けたりしない。その為に、八重を囮にして木乃伊を捕まえたんだからな」
「篠上……?」
大丈夫か、と声を掛けようとした栄は、篠上の顔にギョッとした。
寂しそうな眸は、中庭の緑を溶かした月光で、濡れている様に見える。
あいつは、俺と何を取り合っているんだろうな――――。
そう言った後の篠上は、いつもの様に口の端を上げて、生意気に笑う。
栄は月は出ているのに、自分の中に暗晦とした何かを覚えて、聞きたいことがあるはずなのに、口の中に閉じ込めた。
最初のコメントを投稿しよう!