匂う魔女

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高級マンションの一室で、女の死体が発見された。身元はすぐに判明した。有名な香水会社の女社長だったのだ。 「溺死、ですかね」 現場を見るなり刑事がエヌ警部に向かってそう言ったのは、死体が浴槽に浮かんでいたからだ。 「うむ、そのようだ。しかし、服を着ているから、入浴中の事故ではないな。殺人の可能性が高い」 エヌ警部は警察の中ではちょっとした有名人であり、これまでも何度か殺人事件に遭遇してきたが、毎度見事な推理で事件を解決してきた。そのため部下からの信頼も厚かった。 エヌ警部は早速、死体を司法解剖に回させた。 解剖の結果を待っている間、エヌ警部と部下たちは家の中をひととおり見て回った。そこで気づいたのは、さすがは香水会社の社長ともあって、そこらじゅうに香水が置いてあるということ。ガラス棚に並ぶ色とりどりの瓶には、すべて被害者の会社のロゴマークが打ってあり、その中にはエヌ警部の妻が愛用している香水もあった。 やがて、司法解剖が終わったという電話がエヌ警部に届いたのだが、解剖を担当した医者は、困惑した様子でこう言った。 「解剖の結果、死因はやはり溺死であると判明しました。しかし、ひとつ妙なことがありまして……」
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