匂う魔女

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「なるほど……では犯人は、浴槽の上で被害者に香水を飲ませたのか。被害者がむせても床にこぼれないようにするために」 「わざわざ手間のかかる殺し方を選んだのは、単純に被害者を恨んでいたからではないでしょうか。より苦しめるために、水ではなく香水で溺死させた……」 一応筋の通る話ではあるものの、エヌ警部は、とてもそれが真実とは思えなかった。恨んでいるというだけでそこまで手間もリスクもかかることをする人間がいるのか。そもそも香水を床にこぼしたくなかった理由はなんなのか。 考えあぐねていたエヌ警部だったが、突然、そうか、と声をあげた。あまりの閃きについ大声を出してしまったせいか、刑事は驚いた顔でエヌ警部の方を見た。エヌ警部は得意げに喋り出した。 「どうやら、我々は最初から間違っていたようだ。よくよく考えてみれば、そんな非効率な殺人を犯すものなど滅多にいないのだ。そう、これは殺人ではない。事故だ。ただし、この家で起きた事故ではない。ならばどこで起きた事故なのか。君は、分かるかね」 刑事は少し悩んだが、あまりピンとこない様子で、わかりません、と言った。
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