匂う魔女

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刑事はもはや、尊敬の眼差しでエヌ警部を見つめていた。あの短時間でこれだけの推理を閃くとは、やはりエヌ警部は天才に違いないと思った。しかし、刑事には一点だけ気になるところがあった。 「あの、警部。警部の推理には、僕も本当に感心していて、ほとんどそれで間違いないように思うのですが、ひとつだけ分からないことが……その作業員たちは、どうやって被害者をこの部屋まで運んだのでしょうか。ここは高級マンションで、入り口には暗証番号を入力しないと扉が開かないシステムが付いています。我々は警察なので管理人さんに開けてもらえましたが、住民でもない一般人が、ましてや死体を抱えて、どうやってあの扉をくぐり抜けたのでしょうか?」 実はエヌ警部もそれには気づいていたため、見るからに、痛いところを突かれた、という表情になった。得意げに推理を披露した後であるだけに、なんとか理屈を通そうと、うまい推理を考えようとするエヌ警部だったが、そこへ部下のひとりから電話がかかってきた。それは今のエヌ警部にとっては残念とすら言える報告だった。 「警部、犯人を捕まえました!やたらといい匂いのする男がこそこそしていたので、まさかと思って声をかけると、猛スピードで逃げ出しまして。こちらも猛スピードで追いかけて、何とか捕まえましたよ!男のバッグからペットボトルに詰められた香水が出てきて、これは何だときいたら、あっさり自白しましたよ。女性を殺害し、香水を盗んだとね。詳しいことは、また署に連れて行って聞き出す予定です」
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