匂う魔女

6/7
前へ
/7ページ
次へ
「そうか、よくやってくれた。私たちもすぐに署に向かう」 喜ぶべきことなのだろうが、エヌ警部は露骨に悔しそうだった。そこに、さらに電話が。今度は司法解剖の医者だった。医者はとんでもなく興奮した口調で話した。 「け、警部殿、大変なことが判明しました!被害者の女性の遺体を念入りに調べていたら、胃の表面に新種のバクテリアを発見したのです。まだ詳細まで解析したわけではありませんが、どうやらこのバクテリアは、水を香水に変える作用を持っているらしく、胃の中に香水が溜まっていたのも、おそらくこの作用のせいかと…」 スピーカー越しに隣で聞いていた刑事は、なるほど、と頷いて、 「つまり、こういうことですか。被害者である女性、大手香水会社の社長は、水を香水に変えるバクテリアを持っていた。犯人の男は、そのことを知っている程度には、被害者と親しい関係だったのでしょう。男はバクテリアの力を利用して、ひと儲けしようと考えた。男は被害者の家を訪ね、俺にも香水を分けてくれ、と頼んだ。しかし被害者がそれを断ったので男は逆上し、たまたま張ってあった浴槽の水を無理やり飲ませて香水を得ようとした。殺意は無かったのかもしれません。だが男は無茶をしてしまい、被害者は息絶えてしまった。焦った男はそのまま家を飛び出して逃げた、と」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加