名前のない花

3/5
前へ
/14ページ
次へ
「これは?」  スクロールし、届いたばかりの写真を見せる。特徴的なせいか、こちらも直ぐに言い当てて見せた。 「チグリジア、もう暫くしたら咲くと思う」  新事実も一緒に。 「今時期の花じゃないんですか?」 「うん。確か、六月から八月くらいじゃなかったっけ」  送られていたものは、撮影された写真ではなかったらしい。確かに、出来映えが良すぎるとは思っていたが。  庭の印象から、勝手に撮っているものだと思っていた。だが、これで完全に選択の上、送られたと断言できる。  やはり、何か意味を込めていたのだ。 「ありがとうございました。あとは携帯で調べます」  踵を返す。アプリを切り替え、検索ツールを出した。廊下を歩きながら、検索ワードを入力する。  これで、隠された何かが分かるはずだ。   "ゴジアオイ 花言葉"    ――表示された結果に、驚愕が隠せない。あまりに率直な花言葉に声も出なかった。  続けてもう一つも検索する。表れた文字に、じわりと手汗が滲んだ。    擦れ違う教員の注意も無視し、走る。校門を飛び出し、香澄の家へと駆けた。  電話もしてみたが、繋がることはなかった。  ゴジアオイの花言葉は、私は明日死ぬだろう。  チグリジアの花言葉は、私を助けて。    香澄はきっと、俺に気付いて欲しかったんだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加