8人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は今、自宅療養している。とは言え、重篤な病などではない。
風邪を甘く見ていた結果、拗らせただけだ。その上、更に別の風邪も貰い、長期休暇を要する破目になってしまった。
大切な入学直後の時期を、自宅療養なんて悲しい話である。
俺と香澄は幼馴染みで、唯一無二の親友だ。とは言え、彼女とは基本学校でしか会わない。
幼い頃はよく家を訪ねていたが、六歳の頃、香澄の家庭が複雑化してから減った。父親が変わり、遠出や交友が禁じられるようになったらしい。
とは言え、十歳くらいまでは香澄の部屋へ不法侵入し、密かに遊んだりもしたが。
香澄の家は、常に季節の花が咲き乱れていた。母親の趣味だそうだ。その影響か、香澄自身も花を愛していた。
基本、自信なさげな彼女だが、花に関してはいつも生き生きと語ってくれる。それは学校でも同じで、中学の時は"花=香澄さん"とクラスメイトに認識されていたほどだ。
そう言った理由があり、香澄は花の写真をこの五日、ほぼ毎日送ってくれた。見舞い代わりも兼ねているらしい。
俺自身は花に詳しくなければ興味もないが、定期的なメッセージは素直に嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!