名前のない花

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名前のない花

 アラームが遠くから聞こえてくる。段々大きくなり、やっと夢から帰宅した。頭がぼうっとする。  再び鳴り出した音を切り、そこでやっと通知に気付く。香澄からのRINEだ。  就寝後に来ていたらしい。受信時間は二十三時過ぎになっている。写真が送信されました、との表示があった。  開くと、真っ先に花の写真が見えた。上下を確認したが、言葉の続きはない。ただ、写真だけが送られていた。  白くて、花びらに皺のある花だ。中央部を囲むように、五つほどの赤い模様が入っている。  これだけの特徴があれば、花好きは一発で名を当てるに違いない。ただ、俺は違う。  違和感が胸を飽和した。最終ヒントにしては、あまりにも雑すぎる。このタイミングで送るとすれば、普通は易しいヒントを送るものではなかろうか。それが逆に、今までで一番分かりにくいなんて。  香澄が、理解を前提に送っているとは思えない。そう考えた時、見過ごせない何かを感じた。具体性はないが、大きな何かが引っ掛かったのだ。  もしかして、これは唯の謎かけではない?  勘に忠実に、素早く検索をかけた。特徴を打ち込み、ネットに尋ねてみる。  多種の花がヒットしたが、同一写真は見当たらなかった。
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