8人が本棚に入れています
本棚に追加
名前のない花
アラームが遠くから聞こえてくる。段々大きくなり、やっと夢から帰宅した。頭がぼうっとする。
再び鳴り出した音を切り、そこでやっと通知に気付く。香澄からのRINEだ。
就寝後に来ていたらしい。受信時間は二十三時過ぎになっている。写真が送信されました、との表示があった。
開くと、真っ先に花の写真が見えた。上下を確認したが、言葉の続きはない。ただ、写真だけが送られていた。
白くて、花びらに皺のある花だ。中央部を囲むように、五つほどの赤い模様が入っている。
これだけの特徴があれば、花好きは一発で名を当てるに違いない。ただ、俺は違う。
違和感が胸を飽和した。最終ヒントにしては、あまりにも雑すぎる。このタイミングで送るとすれば、普通は易しいヒントを送るものではなかろうか。それが逆に、今までで一番分かりにくいなんて。
香澄が、理解を前提に送っているとは思えない。そう考えた時、見過ごせない何かを感じた。具体性はないが、大きな何かが引っ掛かったのだ。
もしかして、これは唯の謎かけではない?
勘に忠実に、素早く検索をかけた。特徴を打ち込み、ネットに尋ねてみる。
多種の花がヒットしたが、同一写真は見当たらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!