ハンティング

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 しんと静まり返った、真夜中過ぎの刻。  アキラはベッドから抜け出し、足音を忍ばせて家の玄関へと近づいた。靴箱の影に隠しておいた金属バットを手にし、そのひんやりとした感触を感じた時。アキラは、今夜自分たちがすることへの揺るぎない想いを確信していた。  黒の革ジャンと黒の革パンに身を包み、こちらも黒を基調としたブーツを穿き、アキラは「仲間」との待ち合わせ場所に向った。期待と興奮で熱くなった額や頬を冷やす、そろそろ冬場に差し掛かった季節の、涼し気な夜風が心地よい。アキラは自分の中にふつふつと湧き上がってくる熱量を抑え込むように「ふう……」と深呼吸をしながら、夜の町に歩を進めた。  しばらく歩いて、アキラは仲間の待つ自動車修理工場の裏手へと到着した。潰れかけ、塗装の禿げた廃車の山の前に、アキラと同じ年頃の若者四人がいた。地べたにしゃがみこんでいた彼らは、アキラが来たのを見て「よう」と短い言葉を発し、アキラも「ああ」と簡単な挨拶を返した。それは決して、不機嫌な様子ではなく。言葉にしなくとも、今夜自分たちがやることの意義、それのもたらす他では得られぬ陶酔感を、皆しっかりと把握しているということの現れだった。  四人はそれぞれ、自分たちの用意してきた「ブツ」を手にしていた。ジュンとスグルはアキラと同じく金属バットを、タケシとケンジは角材のようなスチール棒を。金属バットは町の学校などから廃棄されたものを、スチール棒はこれも工事現場跡から拝借してきたものを。いずれも、彼らに「足」のつかないものだった。準備は万端、ぬかりはない。 「じゃあ、行くか」  アキラの言葉と同時に、他の四人は「どぉれ」「よっしゃ」と再び短い返事をして。吸っていた煙草を靴底で乱暴に揉み消すと、一斉に立ち上がった。
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