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「とにかく、逃げなきゃ! ここから! ここにいたら俺たちもやられるよ!」
タケシがアキラの、バットを持った腕を捕まえて激しく揺さぶった。そんな事はわかっている。わかってるけど……アキラには、先ほどのケンジの姿が目に焼きついていた。迂闊に外へ出ようとしたら、ああなるんだ。「奴ら」は、おそらくガードの上の道路で、俺たちが出てくるのを待ち伏せている。どうする、ここで助けを待つのか?
……いや、待っていたって来やしない。ここは、夜中は人通りがまったくと言っていいほどないんだから。だから、俺たちはこの場所を選んだのだから。携帯で誰か、警察とかに助けを呼ぶか? 俺たちが「儀式」を始めようとしたこの場所に? そしたら、前回のことも全てバレるぞ。いや、このままやられるよりもそっちの方がマシじゃないのか……? 今やアキラの頭は混乱を極め、パニック寸前だった。
「俺たちもああなるのかよ……勘弁してくれよ、なんでだよ……!」
焼け爛れたジュンとスグルを見て、タケシはもうほとんど泣き出さんばかりだった。しかし、それを見て、アキラの頭にある考えが浮かんだ。バットをぐいぐいとトレーナーの背中に押し込むと、毛布の燃えカスを拾い上げ。それを手に持ったまま、コンクリの上でまだくすぶっているジュンの体を掴んだ。
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