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外まで聞こえないように声を潜め、それでもしっかりと伝わるようにアキラは必死に叫んだ。タケシはほんとに勘弁してくれよ、なんでこんなことを……と呟き、泣きべそをかきながら残っている毛布を取り上げ、アキラの反対側に回った。二人でジュンの両脇を支え、ズルズルとガードの出口付近まで引きずり、アキラとタケシは、互いに目を見合わせた。いち、にの、さんで、と。アキラが言おうとした、その時。アキラの耳元で、ありえない声が、かすかに聞こえて来た。
「たすけ……て……」
それは、ジュンの声だった。二目と見られない体になりながら、それでもなお、ジュンはまだ生きていた。
「うわああああああ!」
アキラとタケシはほぼ同時に叫び、ジュンの体を放り投げた。ジュンはふらふらっと、酔っ払いのようなおぼつかない足取りで、ニ、三歩歩いた後。ガクンとその場に倒れこみそうになったが、その直前、ガードの上から、びゅん! と弧を描いて跳んできた鎖のついたでかい鉤先が、ジュンの顔面を捉えた。
ぐちゃっ!
焼け爛れ、柔らかくなったジュンの頬肉を、鉤先は貫き。曲がったフックの先は、頬骨にまで達した。まるで海釣りで大物を釣り上げたかのように、鉤についた鎖はジャラジャラと勢い良くガードの上に引かれていった。まだ生きていたジュンの体は、頬骨を支柱としたぎこちない格好で、ぐぃっ、ぐいっと上昇していった。
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