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「今だ!」
アキラとジュンは、またもほぼ同時に叫び。背中に刺していた「武器」を握り締めると、それを闇雲に振り回し、わけのわからない言葉を発しながら、ガード下から飛び出した。肉の焼け焦げた煙と臭いが充満したガード下から脱出し、二人はほんの一瞬、解放されたような気分になった気がした。しかしその気分は、ガードの上から聞こえてきた声によって、すぐにかき消された。
「二人逃げたぞ!」
「こっちだ! なんか二人とも、バットみたいのを持ってるぜ!」
ガードの上にいるのは、その声からして、明らかに「複数」だった。俺たちはやはり、囲まれていたのだ。アキラとタケシは、必死に草の生い茂る斜面を駆け上がった。アキラのブーツは、こういう場所を走るのには向いていなかった。こんな事になるなんて、まったく予想していなかった。こんなに必死に、こんなに無我夢中で走る事になるなんて! とにかく、人気のある場所に行かなければ。ここから逃げなければ!
ずるずると何度も足を滑らせながら、アキラは四つんばいになって斜面を這い上がった。それでも、片手に握り締めていたバットは放さなかった。これを手放す事は、命取りだと思った。
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