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「アキラ、早く来い!」斜面の上からタケシが声をかける。しかし、アキラが焦れば焦るほど、ブーツの足先は雑草の上をずり落ちるばかりだった。「何やってんだ、早く!」見かねたタケシが、登りきった斜面の上から手を伸ばそうとしていた。
アキラも懸命に手を伸ばし、一度はしっかりとタケシの手を握ったかに思えたが。やはりブーツの底は雑草に覆われた斜面を踏みしめる事は出来ず、怖れと緊張で汗まみれになったアキラの手は、タケシの手をズルリと離れ。同時に、アキラの体は再び斜面を滑り落ちようとしていた。
その時。
ぶぁさあっ!
バットを持っていない方の手で、必死に雑草に掴まろうともがくアキラの目の前で。タケシのいた所から、いきなり大きな、漁でもするかのような網が四方から持ち上がり。あっという間に、タケシの体を包み込んだ。
「わああああっ!」
その網から逃れようとタケシは必死にもがいたが、すでに網の四方はしっかりと「奴ら」によって押さえつけられ、縛り付けられ。タケシは完全に捕らわれの身となった。タケシは、文字通りに奴らの「網にかかった」のだった。
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