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「くそう、貴様ら!」
タケシがそう叫ぶのと、ほぼ同時に。手に手に何か鈍器や刃物のようなモノを持った「奴ら」が、五,六人一斉に、網で包み込んだタケシの上にのしかかり。その手にした「武器」をタケシに振り下ろした。
ぐちゃっ! ばきっ!
……鈍く、そして嫌な音が幾重にも重なり、アキラの耳を襲った。アキラは目の前で起きた突然の惨劇に、しばし呆然としていたが。すぐに、はっと気付いた。俺は、穿いていたブーツのせいでこの斜面を登れずにいたが。もし、タケシのように速攻で登りきっていたら。あのままタケシの手を掴んで、斜面の上に登れていたら。俺も今、あの網の中にいたのか……? そう考えた時、アキラの全身を、これまでにない、例えようもない恐怖が襲った。
「わああああああ!」
アキラは、登りかけた斜面を転がるように滑り落ち。そして、水はけが悪いのか、いくらかぬかるんだ道を、泥を跳ね飛ばしながら走り始めた。「わああ、アキラ、アキラぁ!」背後で聞こえる、助けを求めるタケシの声を置き去りにして。アキラは無我夢中で走り続けた。全部……全部、仕組まれていたんだ。俺達を「狩る」ために。あのガード下に、俺達が来る事を予測して、周到に準備をし。そこから俺達が逃げて、この斜面を登る事も予想して、予め網を仕掛けておき。何もかもが、奴らの計画通りなんだ! ここは、奴らの「庭」なんだ……!
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