ハンティング

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 アキラと同じく、黒もしくは濃い灰色の服装に身を包んだ五人の若者たちは、颯爽と夜の町を歩いていた。都会と違い地方にある町の平日には、夜道を歩く者も少ない。そんな中で彼らは、ポツポツと立っている街灯の光に照らされながら、次第に自分たちがこの町に君臨しているような気分になっていた。  それは、彼らがこれから行おうとしている、彼らが言うところの「使命」のせいもあったが。「ここは、俺達の町だ」という陶酔感が湧き上がっていながら、それを表に出さず平然と歩くことの「クールさ」を、彼らは満喫していた。背筋を伸ばし、余計な言葉を発することなく。彼らは今夜の目的地へと歩き続けていた。  この時間では滅多に人が通ることのない砂利道から、更に緩やかなスロープを描く草むらを降りていくと、五人は、真上にニ車線の道路が走る狭いガード下へとたどり着いた。そこが彼らの目的地であり、そして、そこに「奴ら」はいた。  狭く細く、昼間でも日の当たらない、じめじめとしたガード下の空間。それでも奴らにとっては、雨露もしのげる格好の場所なのだろう。汚らしいダンボールで作られた囲いが、幅数メートルしかないガード下のコンクリの上に、幾つか点々と並んでいた。ここが奴らの新しい「棲家」なのだ。前回は、ここからやや離れた所にある、公園に住み着いてた「奴ら」を標的にした。  アキラたちが幼い頃は、よくその公園で皆と遊んだものだったのだが、近頃はすっかり「奴ら」の溜まり場となっていて、小さな子供や女性は、暗くなってからは近づかない方がいいとまで言わるようになっていた。実際、公園の付近で幼児が行方不明になるという事件も起きたのだ。それが本当に「奴ら」の仕業だったかどうかはわからないが。アキラたちは前回、その公園の奴らを「駆除」した。それ以来、公園から奴らは消えた。
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