ハンティング

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 俺たちはこうして、町を浄化しているのだ。アキラたちにはそういう使命感すらあった。俺たちは、見て見ぬ振りをして、口先だけであれこれ言うだけの輩とは違う。どこからやってきたのかわからないが、いつの間にか俺達の街に住み着き、街を汚し、腐らせている奴ら。人々が無視を決め込んで、そこを遠ざけているうちに、勝手にそこを自分達のねぐらとしてしまった奴ら。悲惨な事件と報道されてはいたけれど、きっと影では皆、俺達の使命に賛同していたはずだ。アキラたちは、自分達の「儀式」が密かに街の支持を得ていると、何の疑いもなく信じていた。  そして、今回の標的はこのガード下だ。郊外に出来たでっかいショッピングモールと、そこへと続く、これまたでかい道路が完成したせいで。以前は人通りもそこそこあったこのガード下は、今はもう利用する人も少なく、「奴ら」の住み家と化してしまっている。そうなったことで、ますます人々はこの道を避けて通るようになる。悪循環だ。このままではまた、この付近で何かしらの事件が起きて不思議はない。そうなる前に、俺たちが、奴らを排除しなければ。アキラたち五人は、ゆっくりと静かに、ガード下の標的に向かって歩き出した。  薄暗い、外からの光がほとんど入ってこない、ガードの入り口に近いところに、アキラたちは計画通りの陣形を取った。幾つかのダンボールで申し訳程度の囲いを作り、染みだらけの毛布にくるまり、だらしなく寝そべっている男。頭まですっぽりと毛布を被っているので、その顔は見えないが、おそらくは顔じゅうにみすぼらしい髭を伸ばし、覇気のない目をしているのだろう。こいつが今回の標的だ。  ジュン、ケンジ、スグルの三人が、そいつの寝床を取り囲む。アキラとタケシは、そいつの足元からやや距離を置いて立つ。もし万が一、そいつが逃げ出そうとしても、アキラとタケシがすぐに捕まえるという寸法だ。これも前回の経験から学んだ作戦だ。奴らは抵抗こそしないものの、中には必死になって逃げ延びようとする奴もいる。全員で最初から包囲するよりも、この方が効率的と言えた。
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