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もちろんアキラとタケシにとって、最初の一撃を加えられないというのは残念ではあるが、その代わり、突然の痛みと苦しみに、奴がもがき泣き叫ぶ様を客観的に見られるという楽しみがある。そして、相手がもう逃げられないと知った時、とどめを刺しに加わるのだ。その最後の一撃には、参加しないわけにはいかない。これまでもう何年も、死んだような生活をしてきた奴らに。その生涯の最後に、強烈な痛みを持って「生」を実感させてやるのだ。自分が生きているんだってことを、最後に俺たちがわからせてやるんだ。
おそらくはこのまま、グダグダと生きるでもなく死ぬでもない人生を送り続けるであろう奴らに、ほんの一瞬でも命の痛みを味あわせてやるなんて、なんと慈悲深いことであるか。まさに、「儀式」と呼ぶに相応しい。町を浄化するという使命と、奴らに生の実感を与えるという快感。アキラたちは、これから自分達のやろうとしている事に、完全に陶酔しきっていた。
配置を整えた彼らは、無言のまま、目線で互いに合図を送り。口の動きだけで、号令を始めた。互いの口元を見やりながら、いち、にい……と、声は出さずに口だけを揃えて動かし。標的を囲んだ三人が、それぞれの道具を頭の上に振りかぶり、最後は五人揃って声を張り上げた。
「さんっ!」
その号令と共に、ぐちゃっ! というとびきりステキな音が響き。「ぐぎゃあああ!」と、驚きと衝撃と激痛に満ちた悲鳴が沸きあがる……はずだった。しかし。
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