33人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
「ちょ、何だよ、なんかの罰ゲーム?」
誰かに言われてやったのかと聞くが…
「……」
その質問には答えられず様子を見るためサクヤに背を向けてしまう。
部屋の外を窺っていると、先ほどの2人がサクヤ目当てで歩いて、撮影スタジオに消えていった…
しばらくして先を越されたと思ったのか先輩たちは諦めて帰って行ったようだ。
「なんか答えろよ!」
なかなか答えないみずきに苛立つサクヤ。
「すまない…」
反射的に謝るみずき…
「はぁ?」
意味が分からない!とイライラしてみずきを睨む…
「……」
完璧怒らせてしまってどうすればいいのか分からず無言になる。
「……おい」
何も答えないみずきに怒りを通り越して呆れてくる。
「しばらく動かない方がいい…危険だから」
取り敢えずそれだけは伝える。
「…は?つーか、お前の行動の方が危険だと思うぜ、突然、人拉致って…」
あからさまに不信な目つきで見られ…
「……」
言葉がますます出なくなる。
「何考えてんだお前…」
負の感情で見つめられることがつらくて…
「……俺は、」
やっと言葉を出すが…
その冷たいサクヤの目を見て…
言葉が続かなくなる。
「すまない…」
謝って、みずきは逃げるように部屋を後にする。
走って個室のあるあたりまで来て息をつくみずき。
とりあえずサクヤの危機は救えたので、安堵する。
ますます不信感を植え付けてしまったが…この先、サクヤが自分なんかを振り返ってくれることなどないから…
サクヤが無事なら…たとえ誤解されても、平気だ。
そう思い沈みそうになる気持ちを安定させるみずき。
そこに不意に声がかかる…
「ちょっと、お前…」
「っ!」
なんと声をかけてきたのはサクヤだった…
かなり驚いて動きが止まるみずき。
「なんだよ、んなに驚くなよな。これ!お前がさっき落として行ったんだよ…ないと帰れないんだろ?」
押しつけてきたのはバイクのキーだった…
ズボンのポケットに入れていた筈が慌てて走った時にでも落ちたのだろう…
「あ、ありがとう…」
鍵を受け取りお礼を言う。
「あんまりこの辺1人で歩きたくねーんだから、手間かけさせんじゃねーよ」
先輩達に見つかって襲われる危険性があるから。
サクヤはツンと怒って言う…
「すまない…」
すぐさま謝るみずき。
「ふぅーまぁいいけど、それコウヤ先輩にもらってたバイクのキー?」
相変わらず低姿勢な先輩にやれやれと息をつく…
「あぁ」
サクヤの何気ない質問に緊張しながら返事をする。
「ふーん」
「あの…」
危険地帯のこの場所からサクヤを外まで送り届けてやりたいと思い伝えようとするが…
「キー届けてやったんだから、ちょっと付き合って」
言葉を割って先にサクヤから申し出…
「あぁ」
そのつもりだったので、すぐ頷くみずき。
丁度その時、先ほどの先輩たちが背後を通りかかる…
とっさにサクヤを壁に寄せ抱き込み自分の影になるようにサクヤを隠す。
「ユウお疲れー」
今日相手した先輩はみずきに挨拶して、サクヤには気づかず通り過ぎていく。
「お疲れです」
みずきも振り返り普通に挨拶する。
「……」
(助けてくれた?…まさかな…)
サクヤはみずきの腕の中でぽつりと思うが…
深くは考えない…
みずきはすぐサクヤを解放する。
「えっと、シャワー浴びたいからついてきて欲しいんだけど…」
サクヤは絡まれ防止の為にみずきを連れて行こうと頼む…
「あぁ」
「じゃよろしく!」
サクヤは柔らかく微笑む。
そんな笑顔にドキドキ胸の鼓動が早まるみずき…
すぐ近くにいるのに…手の届かない存在…
自分には眩しすぎる…
そんなことを思いながらサクヤをシャワールームまで連れて行く。
「はー、気持ちいい…1日に二本撮りはキツいよなぁー、もぅ勘弁してほしい…」
サクヤはシャワーを浴びながら撮影のことをぶつぶつ言っている…
みずきは椅子に座ってサクヤが出てくるのをおとなしく待っている。
「……」
「……あ、お前、用事あるなら帰ってもいいぜ、今日はオレなんか運がいいみたいだし…」
今日は誰にも見つからず絡まれることがなかったから…
サクヤはみずきの働きなどつゆ知らずで、そんなことを言う。
「…いや、最後までつき合う」
勘違いされようが報われまいが…
一瞬でも側にいたい…
そんな気持ちで応える。
「そ…、てかお前、さっきなんであんなことしたんだ?誰かに言われたのか?」
普段からあまり性優たちと関わり合いにならないみずきだから、かなり不思議に思うサクヤ…
「いや…」
自分の意志でサクヤを守りたかったから…動いたことで…
上手く説明することは出来ないが…
最初のコメントを投稿しよう!