33人が本棚に入れています
本棚に追加
短編《7月7日》加筆。
天気の良い7月のある日。
身体の調子も元に戻り、学校が早く終わったアキラは、散歩がてらみずきの働くコンビニへ遊びに来ていた。
ちょうど勤務が終わる時間だったので、アキラはアイスクリームをひとつ買って食べながらコンビニの外で待っていた。
不意に慌てた様子で声をかける人物。
「すまない、待ったか?」
アキラの肩に触れ、そう謝る人物。
「みずき、全然…ゆっくり着替えてればいいのに…」
くすっと笑ってアキラは返す。
「いや、待たすのは悪いし…それに…」
少し言い詰まるみずき。
「ん?それに?」
軽く首をかしげるアキラ…
「その服は反則…」
ぽそっと伝える。
「え、ダメかな…今日暑かったからさ…」
アキラは改めて自分の格好を見直して言う。
今日の服装はかなり軽装…上は濃い緑に白のロゴ入りノースリーブに、膝下ジーンズ、そして黒のサンダル。
実に夏らしい格好だが…
そんな可愛い顔で、色白い肩をむきだしにした姿…
ひとりで待たせていると誰に声をかけられるか分からないから、みずきは気が気ではない…
だから急いで出てきたのだ…
「ダメという訳じゃないけれど…俺の前だけにしてほしい、他人に見せるのはもったいない…」
つい本音が漏れるみずき…
「はは、どういう理屈だよ…」
アキラは前髪をかきあげながら呆れたように軽く笑う。
そんなアキラの笑顔に和みながら…
「…行こうか、暑いから…」
そっと呼んで手を取ろうとするが…
「そ、だな。行こ」
するっと手を避けて歩き出す。
「……」
アキラは暑いと手を繋いだり、肩を抱いたりするのを嫌がるのだ。
だから今の季節、手を繋いでくれない…
なんだか夏が嫌いになりそうなみずきだったが…アキラは気にせずマイペースに話している。
近くの公園を通り掛かってアキラはふと、独り言のように声をだす。
「あ、笹だ…今日って七夕だもんな…」
声を聞いて視線を追って見てみると…
公園の端に大きな笹がくくりつけてある。
「あ!…そうか、」
みずきもハッと思い出したように呟く…
「なに?」
みずきを見て首をかしげるが…
「いや…、たんざくがあるな…」
さりげに話を流すみずき。
「書いてみる?」
アキラはちらっと上目遣いで見上げ…首を傾げてくる。
「あ、あぁ」
その、なんとも可愛いアキラのしぐさにドギマギしながら頷く…
「行こ…」
アキラは、お構いなしでみずきを呼んで笹の方へ行く…
笹の下には、簡易机に短冊とペンが置いてあり、自由に書けるようになっている。
「おー、あるある。金持ちになりたい、世界征服…新車がほしい?はは、なんか趣旨変わってきてるよな…」
笹にかかっている願いごとを書いた短冊を読んで、くすくす笑っているアキラ。
「はい…」
みずきは、アキラにペンと短冊を渡してみる。
「オレも?うーん、そーだな…オレの場合は、『長生き!』かな」
冗談っぽく笑って言うアキラだが…
「……アキラ」
不治の病を抱えているアキラ…
冗談にしてしまうには重い言葉の気がして…
みずきはうまく笑えなかった…。
「ほら、みずきは何にする?願いごと」
しかし、アキラは気にせず微笑みかけてくる。
「あぁ…」
アキラが書いた『長生き』の横に書き加えるみずき…
願うことは――。
アキラの健康と…そして、これからも、ずっと一緒にいたい…ということだけ。
願いを込めて書き込んで、アキラの綺麗な字の横に並べて名前を書き込み…笹に控え目につけるみずき。
「アキラ、行こうか…」
優しく声をかけるみずき。
「うん…」
何気ない心の触れ合い…
何よりも大切にしたい…願いが叶うコトを思いながら歩き出す。
「…そういえば、さっき笹見た時、何か気付いてなかった?」
「え…あぁ、思い出して…」
「なにを?」
「…誕生日、なんだ。忘れてて…」
少し恥ずかしそうに話すみずき。
「えっ、今日?」
「あぁ…七夕と同じだから…」
「そっか、じゃ、みずき誕生日おめでとう!」
やや、首を傾け、ニコっと笑って言うアキラは、ちょっと…どうしていいか分からないくらい可愛い。
「あ、ありがとう…」
どきどきするココロを隠しながら…
最初のコメントを投稿しよう!