短編《7月7日》加筆。

1/9
前へ
/131ページ
次へ

短編《7月7日》加筆。

天気の良い7月のある日。 身体の調子も元に戻り、学校が早く終わったアキラは、散歩がてらみずきの働くコンビニへ遊びに来ていた。 ちょうど勤務が終わる時間だったので、アキラはアイスクリームをひとつ買って食べながらコンビニの外で待っていた。 不意に慌てた様子で声をかける人物。 「すまない、待ったか?」 アキラの肩に触れ、そう謝る人物。 「みずき、全然…ゆっくり着替えてればいいのに…」 くすっと笑ってアキラは返す。 「いや、待たすのは悪いし…それに…」 少し言い詰まるみずき。 「ん?それに?」 軽く首をかしげるアキラ… 「その服は反則…」 ぽそっと伝える。 「え、ダメかな…今日暑かったからさ…」 アキラは改めて自分の格好を見直して言う。 今日の服装はかなり軽装…上は濃い緑に白のロゴ入りノースリーブに、膝下ジーンズ、そして黒のサンダル。 実に夏らしい格好だが… そんな可愛い顔で、色白い肩をむきだしにした姿… ひとりで待たせていると誰に声をかけられるか分からないから、みずきは気が気ではない… だから急いで出てきたのだ… 「ダメという訳じゃないけれど…俺の前だけにしてほしい、他人に見せるのはもったいない…」 つい本音が漏れるみずき… 「はは、どういう理屈だよ…」 アキラは前髪をかきあげながら呆れたように軽く笑う。 そんなアキラの笑顔に和みながら… 「…行こうか、暑いから…」 そっと呼んで手を取ろうとするが… 「そ、だな。行こ」 するっと手を避けて歩き出す。 「……」 アキラは暑いと手を繋いだり、肩を抱いたりするのを嫌がるのだ。 だから今の季節、手を繋いでくれない… なんだか夏が嫌いになりそうなみずきだったが…アキラは気にせずマイペースに話している。 近くの公園を通り掛かってアキラはふと、独り言のように声をだす。 「あ、笹だ…今日って七夕だもんな…」 声を聞いて視線を追って見てみると… 公園の端に大きな笹がくくりつけてある。 「あ!…そうか、」 みずきもハッと思い出したように呟く… 「なに?」 みずきを見て首をかしげるが… 「いや…、たんざくがあるな…」 さりげに話を流すみずき。 「書いてみる?」 アキラはちらっと上目遣いで見上げ…首を傾げてくる。 「あ、あぁ」 その、なんとも可愛いアキラのしぐさにドギマギしながら頷く… 「行こ…」 アキラは、お構いなしでみずきを呼んで笹の方へ行く… 笹の下には、簡易机に短冊とペンが置いてあり、自由に書けるようになっている。 「おー、あるある。金持ちになりたい、世界征服…新車がほしい?はは、なんか趣旨変わってきてるよな…」 笹にかかっている願いごとを書いた短冊を読んで、くすくす笑っているアキラ。 「はい…」 みずきは、アキラにペンと短冊を渡してみる。 「オレも?うーん、そーだな…オレの場合は、『長生き!』かな」 冗談っぽく笑って言うアキラだが… 「……アキラ」 不治の病を抱えているアキラ… 冗談にしてしまうには重い言葉の気がして… みずきはうまく笑えなかった…。 「ほら、みずきは何にする?願いごと」 しかし、アキラは気にせず微笑みかけてくる。 「あぁ…」 アキラが書いた『長生き』の横に書き加えるみずき… 願うことは――。 アキラの健康と…そして、これからも、ずっと一緒にいたい…ということだけ。 願いを込めて書き込んで、アキラの綺麗な字の横に並べて名前を書き込み…笹に控え目につけるみずき。 「アキラ、行こうか…」 優しく声をかけるみずき。 「うん…」 何気ない心の触れ合い… 何よりも大切にしたい…願いが叶うコトを思いながら歩き出す。 「…そういえば、さっき笹見た時、何か気付いてなかった?」 「え…あぁ、思い出して…」 「なにを?」 「…誕生日、なんだ。忘れてて…」 少し恥ずかしそうに話すみずき。 「えっ、今日?」 「あぁ…七夕と同じだから…」 「そっか、じゃ、みずき誕生日おめでとう!」 やや、首を傾け、ニコっと笑って言うアキラは、ちょっと…どうしていいか分からないくらい可愛い。 「あ、ありがとう…」 どきどきするココロを隠しながら…
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加