夢見て心繋ぐ

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知っている様で知らない人達。 初めてなのに馴染む風景に奇妙さを覚えて状況を理解した。 『……ああ、夢だ』と。 次いで、浅く覚醒した意識で夢を朧気に把握する私は、目の前に存在する髪を赤に染めた少年の情報が一挙に自分の中に滑り込んで来るのを感じた。 この故郷より遠く離れた異国の地で、彼が友となった者の為に命を賭し危険な荷物を運ぶ役目を自ら負ったのだと。 見れば、赤髪の彼はボロボロの布に巻かれた細長い何かを抱えている。左腕で後生大事に持ち、けれど姿勢は大きく左足を踏み出し腰を捻った上で右拳を突き出すスタイル。言葉足らずの彼は力で問題をねじ伏せたのだ。 一人、責任を負おうとする少年を。 無茶だと諦めの意識を隠しつつ視線を走らせれば、居場所が分かると共にさらなる情報の付与が起こって行く。 不思議ではない。私は『夢見る者』だから。 希薄な自己認識がそう認めているが体は思う様にならない。それ所か余分にもう一つの意識を感じる。この夢の中での役割を演じる『もう一人の私』の意識を。 私の意識は今や私自身からも離れ、立ち並ぶ背中を天上間近な位置から眺めている。
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