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怜華が驚く間も無く、武装をした兵士たちが怜華達を取り囲む。一斉に槍を突き出してきた。
「……その子供を渡してもらおう。お前達に危害は加えたくない」
しばらくの沈黙の後、兵士の一人がそう言った。
「なんで?」
「知る必要はない」
兵士達はジリジリと距離を詰めてくる。無言だが、脅しているのは明白だ。
女の子は怜華の服の裾をギュッと握っている。
怜華はとっさに腕を広げた。
「……庇うと言うのか」
兵士の声が硬くなり、槍の柄を握り直している。怜華は足が震えているのを感じながら目を閉じた。
「綺楼の国民は、昔から慈悲深い愚癡な人間が多かった」
ハッと顔を上げると、隊長のような兵士は矛先を下げ兜越しに怜華をじっと見つめている。
その目を見て、胸を打たれたような痛みが走った。見ているだけで気を失いそうだった。
「彼女達をこのまま城へ連れていってくれ」
女の子が見なくても分かるくらい肩を跳ね上げる。
「いやっ、わたし戻りたくない!」
「戻りますよ」
兵士が一人、女の子に手を伸ばす。それを短い刀が邪魔をした。
怜華がその刀の持ち主を確認する間もなく、血飛沫が舞う。
「っ……貴様!」
「無理強いは、醜いぞ」
長い刀を背負った少年が、布の巻かれた小刀を血で濡らしていた。
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