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「血がっ……!」
怜華は後ずさる。その拍子に踏み込んでしまった血溜まりと、鼻いっぱいに広がる鉄の臭いにツンとし、涙が滲んだ。
初めて、自分の目ではっきり見た。お姉ちゃんが助けてくれた時彼女も血に塗れていたが、その時は記憶が曖昧なのだ。
「こっちだ」
気付けば少年に手を引かれ、女の子と共に建物の裏に隠れていた。
「さっきの奴ら、なんだったんだ? 身なりからして国の兵士。でも、兵には青いスカーフを渡してるって聞いたのと殺れって言っていたところから、もしかしたら傭兵部隊かなにかか……」
少年は顎に手を当て何かを呟いている。怜華は咳き込みながら彼を睨む。
「なんのつもりなの⁉︎ あんな……あんなこと!」
「あんなこと? あいつらを切ったこと?」
彼はきょとんとした顔で怜華を見つめる。
「そうだよ!」
「なんのつもりって……まさか、怒ってるのか?」
怜華は当たり前だと言おうとして言葉を呑み込んだ。
この男の子は、人を切ることに罪を感じていない。そんな気がしたからだ。
「どこだ……! あいつらは」
「隊長! ここは一度引きましょう。上に報告しなければ」
先程の兵士の声がする。
「ひとまず、どこか安全な場所に隠れよう。お前が俺をどう思っていようがこの女の子は関係ないから」
少年の言葉に、怜華は何も言えなかった。
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