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腕を組み、トントンと指を動かしているのを感じて、怜華は後悔した。
腕組みなんて滅多にしない紫伯梁が、床に座らせた怜華を不機嫌そうに見下ろしている。
「何事もなく帰ってきたと思ったら、指名手配犯と幼い女の子を……ねぇ」
自分のことだと分かっていない様子の少年は、物珍しそうに部屋を見渡している。女の子は既に眠っていた。
「もう、噂になってるんですよ。そこの彼がした事。国王が呼んだ精鋭部隊を壊滅させたって。まぁ本当は傭兵団体らしいですけど」
そこの彼、という言葉に、少年は紫伯梁を振り返る。そして床に座り足を組み、拳を床につけた。
「ああ、失礼致した。俺の名は錯堂 美鶴。錯堂 辰馬と恵美子の子。まずは、このようなことに巻き込んでしまったことをお詫びしたい」
紫伯梁は腕を組んだまま無言でその言葉を聞き、言い終わったのを確認してため息をついた。
「とにかく、怜華。これからどうするつもりなんですか? 指名手配犯と一緒に連れてきた女の子を匿おうとか言いませんよね」
「それは……言わないけど」
紫伯梁の声はいつになく厳しい。怜華はごもごもと呟くしかなかった。
「まったく……」
紫伯梁は呆れたように首を振る。
怜華はむくれ顔をつくるが紫伯梁は見向きもしない。
怜華もこっそりため息をついたその時、ライアの声が響いた。
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