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カラリと乾いた冬の空気。輝く星々のその明るい光は、どこか寂しさを感じさせた。
「ろくに荷物も持ってこれずに飛び出してしまった。どうするんだ?」
「知らないよ、そんなの」
美鶴の問いかけに、睡魔と闘っていた怜華は投げやりな返答しか返せない。
すこしでも気を緩めれば、一瞬で意識は闇に呑まれてしまう。危うい均衡を保っているのだ。
そんなことを知りもしない美鶴は、走ってきた道を振り返る。そして、訝しむ声を上げた。
「……人?」
「え?」
怜華も慌てて振り返る。
そこには、ボロボロのワンピースをきた女の人が立っていた。
その顔を見たとき、怜華は危うくその叫ぶところだった。
黒く、長い髪。大きく釣り上がった目。恐ろしいほど整った顔。
怜凛だ。
「お姉ちゃん……!」
怜華は目を見張る。そして、彼女に駆け寄ろうとした。だが、向けられたものを見て足を止める。
「……君、僕を知ってるの?」
彼女はそう言い、冷たい目を怜華に向けた。
その手に握る、鈍い光を放つ短い片刃の刀には、血が滴っていた。
「え……?」
怜華は起きていることが理解できず立ち尽くす。
「聞いてるんだ。僕を知ってるのか」
彼女は再びそう言い、近づいてくる。
「人斬り! 止まれ!!」
「まだ追手がいたか」
兵士が数人、駆けてくる。彼女はため息をつきながら振り返り、スッと目を細めた。
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