8人が本棚に入れています
本棚に追加
兵士が一定の間合いに入ったのを確認し、刀を構え、そして、血が散った。
一瞬。気付けば、兵士は粉々になっていた。
怜華の足元に、切断された腕が転がってくる。
「っ……! あ……」
怜華は真っ青になって後ずさる。その首元に、彼女は刃を突き立てた。
「そこの男の子。僕に切り掛かったらどうなるか……分かるな?」
美鶴が背中に背負ったものを掴もうとした途端、彼女が言う。
その目に、暖かみなんて微塵もなかった。
どこまで見ても、冷たい氷のようだ。
「違う……お姉ちゃんは、そんなことしない……!」
怜華は、首元にあたる冷たい感触に喉が締まりながら、なんとか声を捻り出す。
彼女は一瞬眉を跳ね上げたが、すぐに刀を握り直した。
「女の子も声を出すな。……はぁ。一度、僕を匿え。素性も探るな」
怜華の首から刀を離し、彼女は汚れを落とすように刀を振る。
「大丈夫か、えっと……なんだっけ、名は」
「怜華……だよ……」
緊張が解け、膝から崩れ落ちるように座り込んだ怜華のそばに、美鶴が駆け寄った。
「怜華……? れいか……」
「あなたは、なんて言うの?」
いつの間にか、幼い女の子が彼女に近寄っている。
不意に背後を突かれた様子の彼女は振り返りながら女の子を蹴り飛ばそうとする。だが、女の子は一切動じなかった。
「……光とだけ、名乗っておく。蹴られようと言うのに動揺しない貴様は」
顎に直撃するすんでのところで、光と名乗った彼女は足を止めた。
最初のコメントを投稿しよう!