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「とりあえず、北白亜に行こう」
美鶴の提案に、光は眉をひそめた。
「何故、北白亜なんだ。お前の国でも良いだろう。綺楼の国民」
みんなの少し先を行く美鶴は、なにも言わなかった。
光は腹立たしそうに彼の背を睨むが美鶴は振り返らない。
「お姉ちゃん! お腹すいた」
「ごめんね、エミリーちゃん。もう少ししたら食べれるよ」
その背後で、金髪に菫色の瞳をもつ女の子、エミリーが怜華にすり寄っていた。
「まったく……」
光はなにも言わなくなったが、不満なのがありありと伝わってくる。
こんな状態で、お姉ちゃんを探せるのだろうか。
怜華の頭には、そんな不安がよぎった。
色々なことが一斉に起こり、彼らと一緒にいることになってしまったが、これで良いのだろうか。
ここを離れたとしても、怜華にはなにができるのだろうか。
(お姉ちゃんみたいな強さは私には無い……)
怜華は自分の腕を握る。
悔しかった。
“普通”なのが。
「怜華……だったか? 顔色が悪いが、大丈夫か?」
ハッと顔を上げると、目の前に美鶴の顔があった。
それは、鼻と鼻が当たりそうなほどの距離で。
怜華は悲鳴を上げた。
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