北白亜

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 暗い道を歩き、ある門に辿り着く。   「ここは……」 「寄らない方が良さそうだな」  美鶴の呟きに、誰も返事はしない。  それは、無視では無い。  返事ができなかったのだ。 「やばい……! 抑えられない……!」  一番最初に動いたのは、光だった。  腹を抱え、押し殺した笑い声を上げる。  それに釣られ、怜華も笑ってしまった。 「……あのさ。ちょっとは悪いって思ってるの? 特に怜華」  美鶴が赤く腫れた頬を摩りながら振り返る。  その動きがなんとも滑稽で、怜華は笑いを抑えられなくなった。  笑い声が辺りに響く。 「いや、まぁ俺も悪かったとは思うけどさぁ。ひどくない?」  美鶴は不貞腐れたように口を突き出している。 「ごっごめ……ふふっ」  怜華は答えようとするが、無理だった。 「さ、さて、どうするんだ? 迂回するか?」  光が声を押さえて言う。声も肩も笑いで震えていた。 「布でも被っとけばなんとかなるんじゃないか?」 「流石に無鉄砲すぎる気がするが……」  光と美鶴は顎に手を当てる。先に動いたのは美鶴だった。 「俺が、男物の着物を買ってくる。何かしらはあるだろう。最悪、“借りれば”いい」 「そうだな」  光は納得したように頷いた。
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