北白亜

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「借りるって、貰うってこと?」  会話を聞いていたエミリーが、怜華に聞く。 「えっ……?」 「だって、わたしのお父様とお母様が何かを借りてきた時、召使いさんたち、ああ、“貰って”、きたのねって言ってたもん。後始末もしなきゃって」  驚いた怜華は、門に入ろうとしていた美鶴を追いかけ、腕を掴む。 「借りればって、まさか……」 「……怜華殿は察しが良いのだな」  美鶴はクスリと笑う。 「綺麗なだけでは生きられない。覚えておくと良いぞ」  怜華は驚いて手を離す。美鶴は人混みの中へ消えていった。  その背中を見つめ、怜華は呟く。 「貰ったら、返せないんじゃ……」 「いや、そう言うことじゃないと思うぞ」  追いかけてきた光が、呆れたように言った。
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