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一刻ほど過ぎた頃。
編み笠と外套と,男物の服を持った美鶴が、街を囲う門から飛び降りてきた。
「流石にこんだけの荷物を持ってたら、怪しまれると思ったから」
唖然とする怜華に、事も無げに言ってのける美鶴。怜華は唖然を超えて呆れた。
「とにかく、進む準備はできた。だが男の子。その先はどうするんだ?」
「俺は美鶴だ。男の子じゃ無くて名前で呼んでくれ。進んだ後は、好きなことをすればいいんじゃ———」
「手伝って!」
怜華はとっさに声に出した。
みんなの視線が怜華に集まる。怜華は手を握り、続けた。
「私のお姉ちゃんを探すのを……手伝って」
誰も、何も言わない。
怜華は無言の圧に押し潰されそうな気がして、叫ぶように続けた。
「お姉ちゃん、私のせいで消えちゃって、ずっと探そうとしてたの。紫伯兄さんもライアさんも、もう生きてないって……私は……」
「黙れ」
突然、美鶴が遮った。怜華は驚いて彼を見つめる。
光が訝しむように眉を顰め、二人を凝視している。
「俺の前でその話をするな」
「でも……!」
「俺は協力しない!」
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